城本クリニックの美容外科
CHAPTER 2失敗しない、後悔しない
美容外科手術の受け方
本書は1999年に書かれたものですので、年号表記や現在の治療内容等が異なる場合があります。
城本クリニックの美容外科 美容外科最前線
発行:株式会社千早書房(1999年3月4日)
他人の意思ではなく自分の意志に従う
美容外科に関心があり、実際に手術を受けようと思っているのなら、まず考えてほしいことがあります。できるだけ自分の意見を持ち、自分の意志で行動して欲しいということなのです。今よりも美しくなり、新しい自分を見つけたいという気持ちがひしひしと伝わってくる人もいますが、漠然と美しくなりたいとだけ思って、思いつきのようにクリニックを訪れる人がいるのも事実です。
ひどい例としては、友人の手術に付き添ってきて、あまりにも簡単な手術だったからと、ついでに手術を受けてしまったというケースもあるようです。こういうケースはまれだと思いたいのですが、こんな場合に限って後悔する確率が高いのも確かです。どうして自分は美しくなりたいのか、美しくなったら、その後どうしようとしているのかと、自分の人生に真剣に向かい合っている人からは、私たち医師もいい影響を受けています。
自分の中に手術を受けるためらいがわずかでもあったり、受ける動機があいまいだったり、どう自分を変えたいのかわからないのなら、手術を受けるのは止めたほうがよいとアドバイスします。
また、美容外科の手術を現状からの逃避の方法として捉えてはいないか、もう一度よく考えてみてください。
現実から逃げる手段として考えている人は、たとえ手術が成功しても、また何か、別の理由をつけて現実からの逃避を計る傾向があります。
「恋人にふられたのは自分の容貌のせいに違いない。手術を受けて見返してやりたい」という人もいますが、恋人ができないというのではなく、いたのに別れたという場合は、その原因は決して容貌ではないと思われます。しかも、別れた恋人が一重瞼から二重瞼になったから、見直すなどということも考えられません。むしろ、そんな考えを持っていれば、よけいに敬遠されるか、相手にされなくなってしまいます。
そのような考えでいれば、たとえ新しい恋人が見つかっても、またトラブルが起きたときには、今度はスタイルのせいか鼻の形のせいにしてしまうのではないでしょうか。
自分を取りまく環境が変わらないのは、手術の失敗だという誤った結論に達してしまうことも考えられます。
これでは、せっかく希望通りの手術をして成功させたとしても意味がありません。
前向きになれば幸福を掴めるのに、後ろ向きに不幸な面ばかりを眺めていることになってしまいます。ですから、手術を受ける前に、本当に自分は手術を受けることが問題の解決につながるのか、それが必要な手術なのかどうかをじっくりと考えてもらいたいのです。しかも、他人の意志に紛らわされることなく、自分の意志で考えてもらいたいのです。
もちろんカウンセリングの時間を設けていますので、疑問に思うこと、わからないことをどんどんこちらにぶつけて、考える手だてにしていただけたらと思っています。
手術を受ける最適のタイミングを考えてみよう
クリニックのスケジュールではなく、自分が手術を受ける最適のタイミングを医師と相談しながら決めることが肝心です。
季節としては、冬に受けようが夏に受けようが、問題はありません。しかし、手術を決心したものの、いつ受けたらよいのかは、術後の社会復帰を考えれば結構深刻な問題です。
まず言えることは、先にも述べましたが、美容外科の手術には決して手遅れということがないことです。病気ではありませんから、いつ受けてもかまわないのです。もし、万が一迷いが生じたようなら、いくらでも延期してよろしいのです。
手術を決心したら、一刻も早く受けた方がすっきりするという考え方もあるかもしれませんが、手術は一生のことです。十分時間をかけて検討してもらいたいのです。
決して、初めて診療を受けた日に手術を決める必要はありません。
また、手術はどんな手術でも多かれ少なかれ身体に傷をつけるわけですから、厳密に言えば、患部は腫れ、しばらくは傷跡も残るでしょう。ですから、日常生活に戻るまでの間に患部の腫れが引き、傷が治り精神状態も落ち着くだけのゆとりをおくことが望ましいのです。
医師の方からは何日で復帰できると必ず説明をしますが、それよりさらに余分にゅとりを持った方が、その後の生活がスムーズに始まるのは確かです。
美容外科はたとえ手術が簡単に終わったとしても、その結果、手術の内容によっては傷跡が完全に落ち着くまでには半年とか一年の単位で時間がかかることがあります。
もし、就職や結婚など、人生の重要な節目を目標に手術を考えている人は、それなりに時間をとるべきでしょう。
すぐにでも手術を受けようと急いていた気持ちが落ち着き、冷静に自分を見つめられるようになるまで、カウンセリングを重ねていきます。もちろん初めから、すっかり落ち着き、自分を見失っていない人も見受けられます。一度か二度のカウンセリングしか必要としない人もいます。しかし、迷うこともなんら悪いことではありません。そんな中から手術の目的や、その後の人生設計もはっきりと見えてくることもあるからです。むしろ、そんな人こそ、よい手術結果が得られるものです。
そういう時間を持つためにも、ゆとりは十分過ぎるほど持って手術に臨むべきでしょう。
質問はあらかじめメモにしておけば安心
美容外科の診察は病気の診察と違い、カウンセリングのようなものと考えてくださればよいでしょう。手術に関して患者と医師で共通の認識を得ることが中心の作業となります。そのために話し合いを重ねます。
まず、手術を決心して、診療所を訪れたとします。しかし、いざ、初めて診察を受けると、ほとんどの人が平常心ではいられなくなります。
ある統計によれば、最初の診察時に患者さんが医師から受けた説明の90パーセントを忘れてしまうという結果が出ています。そのような状態で手術を決めたらどうなるでしょうか。もっとくわしく説明を聞いておけばよかったと後悔しても後の祭りです。しかも、医師の方は説明をちゃんとしたと思っているわけですから、トラブルの原因にもなりかねません。
そんなトラブルを防ぐために、自分の知りたいことを、あらかじめ質問形式にして、メモしておくことをお勧めします。冷静に考えられるときに気づいたことをメモしておけば、診察時にそれを漏らさず聞くことができます。
では、どんなことを間けばいいのか、患者さんが最も聞きたいと思われるのは次の四つに集約されます。
- 手術の方法とその長所、短所。そしてどのような経過が予測されるのか。
- 手術後何日で日常生活に復帰できるか。あるいは仕事に復帰できるか。
- 費用はどれだけか。いつ、どのようにして支払うのか。
- 手術に伴う痛みや、副作用があるとすればどのようなものか。
この四つの質問を抑えたうえで具体的な質問内容を次にまとめてみました。
これだけはぜひ聞いておきたい23の質問
- 手術の内容と仕組みについて
- 麻酔方法について(局所麻酔か、全身麻酔か)
- 手術後の通院、アフターケアなどはどれくらいまで必要か
- 抜糸は何日目か
- 手術当日、帰宅できるなら、手術後の包帯やガーゼの状態はどうか
- 手術はだれが行うか
- 手術当日の持ち物は何か必要か
- 手術後、どのような薬が、いつまで必要か
- 手術後、何日で日常生活に戻れるか
- 風呂やシャワーはいつから使えるか
- スポーツなどの趣味はいつから再開できるのか
- 入院は必要か
- 化粧はいつからできるか
- 手術後帰宅する場合の乗り物は
- 手術後の腫れはどの程度続くのか
- タバコ、お酒はいつから嗜めるのか
- 手術当日の食事はどうしたらいいのか(手術の何時間前から絶食かなど)
- 手術後の食事はどのようなものがいいのか
- いつごろから人に会えるのか、仕事ができるのか
- 傷跡はどこにどのようにできるのか
- 手術中や手術後の痛みの程度はどれくらいか
- トータルな費用はいくらかかるか
- 手術後、具合が悪くなった時の対応は
この他にも個人的に聞きたいことがいくつか出てくると思います。それも加えて質問表を診察時に持参すればよいでしょう。
もしこうした質問メモを煩わしいと感じたり、いやがる医師がいたなら、そこで手術を受けることはすぐにでもやめてください。良心的な医師なら決していやがるようなことはありません。むしろ、喜んで用意周到なあなたを積極的に支援してくれるはずです。
気持ちにゆとりを持って診察に臨もう
前項にあげたように、医師に聞かねばならないこと、聞くべきことはたくさんあります。それらを一度に聞こうなどと思う必要はありません。むしろ何度でも診察に通える余裕を持ってほしいのです。診察当日に手術を受ける決心をする必要もありません。答えは、一人でじっくりと考えてからでかまわないのです。
さて、先のような質問を医師にした場合、どのような答えが期待できるかをお話しします。
まず言えることは、われわれ医師の立場からすれば、答えることのできるのはあくまでも目安にほかならないということです。たとえば手術後の腫れを例に取れば、腫れは個人の体質や身体の調子にもよるし、手術も厳密にはまったく同じ手順はあり得ないことから、その経過も当然違ってきます。
ですから、平均的な数字を申し上げるしかなくなるのです。そのあたりを考えに入れ、余裕を持って仕事を休む期間などを決めた方がよいでしょう。
また、できるだけ、安静を保てるような配慮を自分自身でも心がけておく必要があります。
薬の服用に関してなどの質問は、はっきりと答えられる種煩のものです。しかし、痛みについては、これは個人的なことですので答えにくいものです。
そして、手術費用ですが、美容外科は基本的に白巾診療で行われますので保険がききません。検査も診察も、投薬や入院費に関しても保険診療と比べれば大きな隔たりがあります。ですから、費用は全体でどれはどかかるのか、その支払い方法はどうするのか、すべてクリアにしておかなければいけません。
今まで述べたことにすべて共迦するのは、気持ちのゆとりです。
時問をしっかり取るという余裕、手術の詳細を把握することも余裕につながりますし、賞川をクリアにしておくことも気持ちにゆとりを生むことにつながります。
手術の日を迎えたら
手術の日取りが決まれば、心の準備がすっかり螫っているあなたは、淡々とその日が来るのを待つことができるでしょう。そして、当日を迎えます。手術当日はどんなことに注意したらいいのでしょうか。その前日からタイムテーブルに従って説明してみました。
前日までにしておきたいこと
手術の承諾などに必要な書類の提出。
手術や入院に必要な持ち物はなるべく早めに用意し、直前に慌てないようにします。
どんな小さな手術でも緊張は避けられません。十分に休養し、精神的にもリラックスすることが何よりも大切です。
当日
当日の食事についてはあらかじめ聞いておき、その通りにします。これは麻酔のためにも絶対に守らなくてはならないことです。手術前、どれくらいから食事をとってはいけないか、とっていい水分の量なども聞いておき、守ること。
日帰りできる外来手術なら、服装はなるべくリラックスできるもので、包帯やガーゼをするのにじゃまにならないようなものにします。また、病院から指示があれば、サングラス、マスク、帽子、スカーフなどを持参することにもなります。
手術前には当然洗顔などは十分に行いますが、できれば、化粧などはせずに病院に行くのが望ましいでしょう。
後日
安静が第一。手術でできた傷の安静をはからねばなりません。それが一番良い結果をもたらします。どうしても手術後は多少とも出血がみられます。できるだけ出血を少なくするために、血圧が上がるような行為は慎みます。そして、運動や飲酒、喫煙、お風呂、セックスなどは傷口が落ちつくまで避ける必要があります。
また、病院から処方された抗生物質や痛み止めなどの薬は決められた通りに服用してください。傷口が化膿などしたら取り返しのつかないことにもなりかねません。決められた抜糸の日には必ず行って、抜糸をします。抜糸の時期は、早すぎるのはもちろんよくありませんが、遅すぎても、糸の跡が傷口に残ることがあるので遅れないようにします。
こと医療行為に関しては、任せた医師を信頼しその注意を細大漏らさず守ることです。ただし、疑問に感じたことは率直に質問し、疑問のままにしておかないことが肝心です。
美容外科の手術料金に適正価格はあるのか
美容外科ではほとんどが自由診療であるため、同じ手術でも料金がまちまちで、なにが基準になるのか患者サイドではわかりづらいのが実状です。けれども、手術料金と技術には強い比例関係がないと思っていただいてよいでしょう。
料金が高いから、高度な技術が受けられ、高級な施設に入院できると考えるのは早計です。前に述べたとおり、広告宣伝に多額の費用をかけている例も多く見られます。そうしたところでは宣伝費が上乗せしてあると見るべきです。
どちらにしても電話で問い合わせた時や、雑誌に載っている料金と実際が違うようなところは、はっきりだめと言えるでしょう。
問い合わせる場合には、たとえば、脂肪吸引を例にとれば、腕なら全周か、内側だけなのか、取る範囲を明確にしたうえで、それが適正な料金か判断する必要があります。
いずれにしろ大切なことは、多少差があったとしても十分に話をして全面的に信頼し、任せることのできる医師を探すことです。
美容外科は熟練の技がものをいう
手術というのは手の術です。どんな手術でも人の手を借りねばできません。レーザー治療や脂肪吸引などの器具を使う場合でもヽ微妙な調節は医師の裁量に任されています。
医師の技量が大きく問われるのが外科手術ですが、中でも、一番繊細な部分である、顔を扱うことの多い美容外科こそヽ最も信頼できる技術の持ち主にかかりたいと思うのが患者の素直な感情です。
ところがヽ技術というのは目に見えません。他の外科ならば、ロコミなどによる評判も聞こえてきますがヽ日本では欧米と違い、患者自身が手術を受けたことを第三者に口外し評判を広めることはほとんどありません。実際に多くの医師が美容外科には関わっていますが、研修医に毛の生えたような未熟な医師や、昨日まで内科医だった医師が間業したりと、その技術力には天と地ほどの大きな隔たりがあります。
また、何年間にもわたって、著名な美容外科のクリニックで、外科医として勤務してきたという人の実質を聞けば、ほとんど男性の包茎手術しか経験していなかったという笑えない話もあります。
それではなにも基準がないのかといえば、そういうわけではありません。プロローグで美容外科の発展の歴史に触れましたが、美容外科は外科の一部が発展した分野です。各種の外科の専門医として長年キャリアを積んできた医師であるうえに、さらに美容外科医として研鑚を積んでいれば、まずその技術は確かだと言えるでしょう。
医師を選ぶのに比べて病院を選ぶのはまた別の問題があります。一般の病気やけがならば、設備を比べて、充実している総合病院や大学病院などを選ぶということも考えられますが、美容外科は、そういった総合病院や大学病院にはほとんどありません。専門のクリニックの方が熟練した技術を持った医師に出会える可能性が高くなります。
大学病院や大病院にはその道の権威といわれる人が必ずいますが、高齢であることがしばしばです。外科は手術が命です。外科医として最も脂が乗り切っているのは、30代後半から40代です。この年代が生きた経験を最も多く積める時期だからです。権威といわれる人は、過去においてはすばらしい業績を上げられているのでしょうが、最新の実際的な医療に関しては、現場の第一線で活躍している現役の医師に一歩も二歩も譲ることになります。
良い先生に巡り会えるかどうかはより多くの美容外科を訪れ、実際に手術を担当してくださる医師と(カウンセリングと手術担当医が違うこともあり得ます。その場合は両者と)直接会い、説明を受けることが大切です。
リスクまで含めて、丁寧に説明してくれるかどうかという点に注目してください。良いことしか言わないようなら要注意です。いずれにしても第一印象だけで決めるようなことはせず、何度か話し合うことで、コミュニケーションをはかり、信頼できる医師かどうかを自分で判断することが大事なのです。