コラム
COLUMN幹細胞点滴における副作用リスクや注意点について
高いリバースエイジング効果が期待できる事から日本だけではなく世界各地で人気が高まっている幹細胞点滴の治療ですが、様々なメリットがある一方で注意しなければならないのが副作用のリスクです。
幹細胞点滴に関する副作用にどのようなものがあるのか、そしてどのように対策をするべきかなどについて詳しく解説いたします。
幹細胞点滴とは?
再生医療の研究が進むにつれて多種のエイジングケア効果が得られると期待される幹細胞点滴ですが、実は「幹細胞」という名称が使われている治療法には2つの種類があります。
まずはこの2種類に違いについて解説します。
自己幹細胞培養点滴治療
一つ目は、治療を受ける本人から採取した幹細胞を専用の培養施設にて培養し、再度点滴にて投与を行う治療法です。
幹細胞を用いた治療として特に研究が進められているもので、単純に幹細胞点滴という場合はこちらの方法であると考えられます。
治療の効果
幹細胞とは、私たちの体の中にある細胞の一種で、細胞を作り出す工場のような働きをする細胞です。
培養に用いられる幹細胞は細胞分裂によって増殖する「自己複製能力」と、神経や筋肉といった様々な細胞に変化する「多分化能」を持ち合わせており、点滴によって投与されると体の中で損傷している部位に集まって新しい細胞を作り出す事で組織の修復を行います。
もちろん幹細胞そのものは点滴を受けなくても体内に存在しており、定期的に自己複製によって増殖しているのですが、日常生活の中におけるストレスや紫外線など様々な要因によって徐々に減少する量の方が多く、年を重ねるに従って幹細胞の数は減少していきます。
幹細胞の数は生まれた時は約60億個ほどあるのに対し、20歳頃には約10億個、40歳では約3億個と減少していくといわれており、これが加齢によって体の代謝が衰え、様々な不具合を生じさせる一つの要因となっています。
幹細胞点滴では、放置しておくとどんどん減少してしまう幹細胞を体の外で培養して増やし、再度体内に戻すという手法によってこれを解消する事ができます。
治療の方法
幹細胞点滴は、まず培養を行うための幹細胞を採取する事から始めます。
培養に用いられる細胞は多くの場合で脂肪の中にある幹細胞で、これは脂肪内の幹細胞が「間葉系幹細胞」という筋肉や皮膚、神経など様々な細胞への分化を行う能力がある事や、体の部位の中でも採取しやすいという点、そして脂肪の中には幹細胞が含まれている割合が多く、培養しやすいという点によるものです。
採取の方法はクリニックにもよりますが、数センチ程度切開して脂肪細胞を採取する形となり、数十から100㏄程度の脂肪を採取します。
その後、脂肪細胞から得られた幹細胞を培養液の中に入れて管理しながら増殖を促し、数週間かけて数億個ほどの幹細胞まで増殖をさせます。
治療に必要な幹細胞の数が確保できたら、培養液から幹細胞を分離して点滴によって注入して治療は終わりです。
幹細胞は培養を繰り返しすぎると働きが悪くなってしまうので、ずっと培養をし続けて何度も注入するという事はせず、1クールの治療が終わった後に再度点滴を行う場合は細胞の採取から始める事となります。
幹細胞培養上清液点滴
幹細胞という名前がついていて、更に期待できる効果としても近い内容が多いため混同されやすいのですが、幹細胞培養上清液点滴とされるものは幹細胞点滴とは別物です。
「幹細胞培養上清液」という名前の通り、こちらは幹細胞を培養する際に使用した「培養液」を精製したものを薬剤として使用します。
実は、幹細胞の培養液は以前までは廃棄されてしまっていたものなのですが、幹細胞の研究が進む中でこの培養液中には幹細胞が培養される過程で放出した様々な美容・健康の向上に役立つ成分が含まれている事が分かり、これを活用する事でエイジングケア効果を始めとした治療効果を得ようと開始されたものが、幹細胞培養上清液点滴です。
幹細胞培養上清液点滴の効果
幹細胞培養上清液の中には、成長因子やケモカインとよばれる各種サイトカインや、エクソソームが豊富に含まれており、こういった成分が体内の細胞における代謝を促進したり、傷ついた組織の修復を行う事で高い治療効果が発揮されます。
代表的な成分としては下記のようなものがあります。
細胞間の情報伝達物質とされる非常に小さな物質で、mRNAなど細胞の断片が入ったカプセルのような状態となっているものです。
エクソソームが細胞にくっつくと、細胞の損傷修復が促進されたり、テロメアとよばれる細胞の寿命ともいえる因子を延長して、細胞の寿命を長くするといった働きをします。
皮膚(角質)の細胞増殖を促す成長因子で、EGFの働きによって皮膚のターンオーバーが行われます。
EGFは20歳以降、加齢によって体内での合成量が急激に減少していくものの一つで、EGFが少なくなると皮膚のターンオーバーが鈍くなり、シミや毛穴の開きといった肌トラブルが生じやすくなります。
FGF
皮膚の真皮層とよばれる箇所などにある「線維芽細胞」というコラーゲンなどを作り出す細胞の活動を促進する成長因子です。
年を重ねるとシワや肌のタルミなどのエイジングサインがでてくるのはこのFGFが減少していく事が一つの要因で、点滴などによって取り入れる事で肌のハリを改善していく効果が期待できます。
幹細胞培養上清液点滴の治療方法
幹細胞培養上清液点滴については、幹細胞点滴と異なり細胞そのものを取り入れるのではなく、遠心分離などによって幹細胞を取り除いた上清液のみを使用するため、だれの細胞を培養する際に得られた上清液でも問題はなく、治療を受ける方から細胞を採取する必要はありません。
適切な細胞の培養によって作られた幹細胞培養上清液の薬剤がクリニックに用意されていますので、治療を受ける際はこれを点滴で投与するのみとなります。
培養などの時間は不要で、いつでもすぐに治療を受けやすい点がメリットです。
幹細胞点滴の副作用リスク
幹細胞点滴は副作用のリスクが非常に少ない治療方法の一つです。
もともと体の中にあった幹細胞を培養して戻すという治療、つまりは自信の細胞を増やすという手法ですので、拒否反応などが生じる事も殆どありません。
考えられる副作用やリスクとしては、点滴(注射)による軽度の腫れや赤み、かゆみ、場合によって内出血などの軽微な症状ですが、こういった症状が出た場合でも2~3日程度で副作用は治まりますので、心配する必要はないでしょう。
また、これは副作用とはやや異なりますが幹細胞点滴では培養のために脂肪を採取するため、脂肪を採取した部位の切開による腫れや痛みが生じる可能性はあります。
ただし、脂肪細胞にはもともと痛覚もありませんので切開部位が回復していく過程での痒みなどこちらも非常に軽微な副作用程度でおさまるでしょう。
切開による傷跡が体質などによっては一定期間残る可能性もありますが、そもそも非常に小さい範囲の切開ですので治療跡が目立つといった副作用まではおこりません。
この他では感染症などが非常に稀な副作用として考えられますが、適切な環境で治療が行われている限りはまず心配する必要はないでしょう。
幹細胞培養上清液点滴の副作用リスク
幹細胞培養上清液点滴については、薬剤の品質などによっては副作用の可能性もあるといわれています。
エクソソームの働きによる「癌化」の副作用
幹細胞培養上清液中に含まれる「エクソソーム」の働きを有効活用した治療の人気が高まっていますが、エクソソームは細胞間の情報伝達物質であり、癌細胞から作られたエクソソームが周囲の細胞を癌化させるといった報告もある事から、治療における副作用の可能性として紹介される事があります。
結論からいえば、当たり前の事ではありますが点滴に用いるような培養上清液を作る際に癌細胞がある幹細胞が用いられる事はありませんし、癌に限らず病変の可能性となるような物質はしっかりと排除されていますので、こうした副作用はまず起こりません。
過剰な成長因子などのサイトカインによる副作用
コロナ禍で免疫の暴走状態におちいる「サイトカインストーム」という言葉を耳にする機会も増えたかと思いますが、幹細胞培養上清液中にはサイトカインが豊富に含まれているため、過剰な量を点滴した際はこうした成分がなんらかの副作用に繋がる可能性があるとされています。
こうしたトラブルを避けるために幹細胞培養上清液の点滴では一度の治療で注入できる上限量なども薬剤毎に決められていますので、適切な取り扱いを行っているクリニックであればまず問題はないでしょう。
また、成長因子の一つであるFGFの注射治療では皮膚の一部に過剰なコラーゲンが作られて凸凹になってしまったというようなケースが報告されていますが、幹細胞培養上清液の点滴や注射についてはFGFのみが強力に作用するというような事はありませんので、こうした副作用トラブルがおこる心配はしなくてよいでしょう。
注射による副作用などは幹細胞点滴と同じ
幹細胞培養上清液点滴についても、やはり針を刺して点滴を行う治療ですので軽度の腫れや内出血といった副作用が生じる可能性が考えられます。
一方で、上清液を使用した治療では細胞の採取が必要ありませんので、その点では副作用やダウンタイムもまず生じず、手軽で安全に受けやすい治療であるという事ができます。
幹細胞点滴の副作用は適切なクリニックと医師の治療であればまず問題ありません
幹細胞そのものを培養して投与する治療や幹細胞培養上清液の点滴治療については、投与する薬剤の管理が適切に行われているクリニックで治療をうけていればまず重大な副作用の心配はありません。
ただし、やはり治療による影響を十分に把握していない医師の治療では効果が十分に発揮されなかったり、過剰な量の点滴による副作用なども考えられますので、十分な知識を持った医師の元で治療を受ける事が大切です。
城本クリニックでは、長年再生医療に関わってきたベテラン医師をはじめ、治療への知識が豊富なドクターが揃っており、術前のカウンセリングからしっかりと効果や副作用リスクについて説明を行った上で適切な治療を行っております。
治療について興味をお持ちでしたら、是非一度お気軽にご相談ください。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹