コラム
COLUMN幹細胞点滴の費用はどのくらい? 注射系治療のコストと効果を比較
エイジングケアをはじめ様々な美容効果、健康効果から注目されている再生医療ですが、その中でも特に治療の手軽さなどから人気が高まっている治療が、培養された幹細胞や幹細胞の培養液を点滴にて投与する治療法です。
今回は幹細胞点滴を中心に、類似した美容点滴などを含め、費用がどのくらいなのか、そして効果にどのような違いがあるのかなどをご紹介します。
幹細胞点滴とは
幹細胞点滴とは、幹細胞そのものや幹細胞を培養する際に得られる培養上清液などを点滴によって投与する事で行う治療です。
幹細胞とは細胞分裂によって増殖する能力と他の細胞に変化(分化)する能力をもった細胞の事で、人の体はこの幹細胞の分裂によって新しい細胞が日々作られる事で維持されています。
幹細胞は加齢などによって徐々に減少していってしまうため、若いころと比べて年をとると新しい細胞が作られにくくなり、健康な細胞の数が減っていき、これが人の体の老化が進んでいく大きな原因となっています。
幹細胞点滴では、減少してしまった幹細胞そのものを補ったり、幹細胞の働きを促して新しい細胞や組織が作られやすくする成分を直接体内に取り入れる事で、体内の組織を若返らせていくという目的の治療となっています。
「幹細胞」と「幹細胞培養液」
幹細胞を活用した再生医療は、元々は培養によって増殖した幹細胞そのものを活用する事が主要な研究となっていて、幹細胞の培養を行っていた培養地(培養液)自体は廃棄されていました。
培養された幹細胞そのものを組織が損傷している部位に注入して修復していく治療や、幹細胞に特定の刺激を与える事によって体の組織を新しく作り出すという事が研究の目的であって、培養液は不要なものだったのです。
幹細胞そのものを使用する治療法では、まず治療を受ける患者から細胞を採取し、その中に含まれる幹細胞を専用の施設で培養したあと、再度患者に注射や点滴で投与するといった内容となっています。
このタイプの治療では体内で減少してしまった幹細胞の数そのものを直接補う事が出来るため、特に加齢などによって損傷し、細胞の数が減少しているような組織の修復を行うものとして高い効果を発揮します。
場合によっては保険適用の治療もあり、白血病などの患者に対する造血幹細胞移植や、脊髄の損傷に対する脊髄再生治療などは期間の限定などもありますが保険適応で、2~3割の負担で受ける事も可能となっています。
一方で、これまで廃棄されていた幹細胞の培養液についても、研究が進むうちに細胞の活動をサポートする様々な有効成分が含まれている事が発覚してきました。
そして、幹細胞そのものではなく培養液の方も研究が進められてきた結果として、実際に行われるようになってきた治療が幹細胞培養上清液の点滴治療です。
幹細胞の培養液には、細胞の活動や代謝を促進する成長因子などのサイトカインや、細胞の修復を行うエクソソームなど様々な成分が豊富に含まれています。
そのため、幹細胞培養液を点滴によって投与すると細胞の活動が活発化され、健康な細胞への入れ替わりが進んでいく事となります。これによって様々な美容効果、健康効果が得られるのです。
また、幹細胞培養液中に含まれるこうした成分はDNAを含まないため、治療を受ける本人から採取した細胞の培養によって得られたものでなくても拒否反応などが生じる心配がありません。
幹細胞そのものを移植する治療については他人の細胞を体内に入れてしまうと拒否反応が生じて健康被害に繋がる可能性があるため、本人から細胞を採取して培養する必要があるのですが、幹細胞培養液の点滴については幹細胞そのものは除去された状態で点滴を行うものですので、本人から細胞の採取や培養を行う必要はありません。
事前に注入するものを薬剤として準備する事が出来るため、治療は点滴を受けるだけの非常に手軽な内容であり、また費用も大幅に抑える事が出来る点が強いメリットとなっています。
幹細胞点滴治療の費用について
幹細胞点滴の費用は、それぞれ下記のような金額となっています。
保険適応の幹細胞点滴
前述の通り、白血病など正常な血液を作ることが困難な症状を持つケースにおいて、骨髄や臍帯などから造血幹細胞を移植する治療や、脊髄が損傷してしまったケースで、骨髄の細胞を採取して培養してから再移植するという治療については保険適応での治療が可能となっています。
金額はそれぞれ、造血幹細胞の移植であれば数百万円の治療を2~3割程度の負担でうける事が可能となる形で、更に高額医療費の適用も受ける事が出来るため、国内でドナーが確保できれば十数万円で受ける事も可能となります。
脊髄再生医療については2018年に7年間の期限付きで保険適用が承認された治療ですが、こちらは治療一回に必要な薬品(患者の骨髄から採取された細胞を培養するキットなどの費用)の薬価が約1500万円程度となっており、自己負担分はこれの2~3割となります。
こちらも同様に高額医療費の適用も受ける事が可能なため、最終的な自己負担はとても少なくなるといえるでしょう。
自費診療での幹細胞点滴
上記のような症状に該当するケース以外では、基本的に幹細胞点滴は自費診療での治療となっています。
美容や健康目的で行われる幹細胞点滴では、殆どのケースで脂肪由来の幹細胞が用いられます。
これは、脂肪細胞は比較的用意に採取しやすい細胞であるという点や、脂肪には幹細胞が多くふくまれるため、培養が非常に行いやすいという点。そして、何よりも脂肪中に含まれる幹細胞は間葉系の幹細胞として皮膚や神経、筋肉など健康増進のために必要な細胞に変化できる性質を持っているという事が理由となっています。
治療法はどのクリニックでも基本的に同じで、まずは治療を受ける本人の腹部などから100㏄など少量の脂肪を採取し、その細胞を培養を行う専門の機関に送ります。(培養のための設備を保有しているクリニックもあります) その数週間かけて幹細胞を培養して増殖した後、静脈への点滴などによって投与を行います。
費用は自費診療のためクリニックによって大きく差がありますが、数百万程度から、場合によっては千万円を超えるような金額で提供を行っているケースもあります。
幹細胞培養液点滴
幹細胞培養上清液という、幹細胞の培養によって得られた成分が豊富に含まれる上清液(幹細胞自体は取り除いたもの)を薬剤として点滴する治療法です。
幹細胞培養上清液には成長因子やエクソソームなどが豊富に含まれており、これが細胞の働きを促進する事で様々な美容効果、健康効果を得る事ができます。
幹細胞培養液点滴も自費診療のため、かかる費用はクリニックによって異なりますが、最少分量での点滴であれば1回あたり数万円程度で治療を受ける事が出来るクリニックが多く、比較的低価格で始めやすいといえるでしょう。
なお、幹細胞培養液点滴で使用される薬剤は様々な製薬メーカーが製造していますが、薬剤によって有効な成分の濃度は大きく異なっています。
単純に治療費用が高額な所=高品質な薬剤を使用しているというものではありませんが、その時の平均的な治療金額など相場といえる金額からみて大幅に安い価格で治療が行われているようなケースでは、使用される薬剤の品質も低く効果を実感しにくい可能性があるかもしれません。
使用している薬剤の種類や管理方法を確認し、きちんと効果が得られるクリニックでの治療を受けるようにしましょう。
類似した点滴・注射治療について
幹細胞点滴と近い効果などが期待できる治療法として、下記のようなものがあります。
PRP療法
血液を採取し、そこから血小板を遠心分離などによって集めて作ったPRPを再注入する治療法です。
血小板はケガをした際に血液を凝固させて皮膚など損傷した組織の回復を促進する性質を持ちますが、成長因子などのサイトカインも豊富に放出するため、これを利用して肌のケアなどに役立てるというものです。
自信の血液を採取して加工し、再度注射するという行程のため、再生医療を行う施設としての認可がないと治療を行う事ができません。
PRPはジェル状のため、全身に効果を期待するような点滴療法ではなく、局所のケアを目的とした注入治療になります。
費用は1回あたり10万~数十万円程度で、効果は数年程度持続するとされていますが、体質などによってはコラーゲン組織が増殖しすぎる事で硬くなってしまうなどのトラブルに繋がる事もあります。
エクソソーム点滴
エクソソームは細胞の修復効果や、テロメアという細胞の寿命とも言われる部分を修復して延長させる作用を持つといわれている成分です。
エクソソームは幹細胞培養上清液を遠心分離にかける事などで得る事ができますが、エクソソーム点滴といった形でクリニックにて提供されているような場合は、その殆どがエクソソームが豊富に含まれた幹細胞培養上清液の点滴というものになっています。
NMN点滴
NMN(ニコチンアミド モノクレオチド)を点滴する治療で、NMNは細胞の代謝に必要な成分です。
NMNは体内でも合成されていますが、加齢によりその分量が減少していく成分のため、これが年を取ると代謝が低下していく大きな要因となっています。
NMN自体は食事によっても微量に摂取する事ができますが、美容目的として十分な効果を得られるだけの分量を摂取しようとすると、含有量の多いブロッコリーであっても1000房程度を食べる必要があり、現実的に困難です。
そのため、サプリメントや点滴にて取り入れる方法が人気となっていますが、特に点滴療法の場合は血管内に直接投与されて全身の細胞にすぐいきわたるため、すぐに治療の効果を実感する事ができます。
費用は1回あたり数万円程度で、正しく薬剤が管理・使用されていればクリニックによって効果が異なるという事も少ないでしょう。
幹細胞点滴はクリニックによって費用も効果も大きく異なります
幹細胞点滴、幹細胞培養上清液点滴は自費診療のためクリニックによって大きく金額が異なり、また薬剤や管理方法による差も大きいため、期待できる効果の程度にも差がでやすい治療法です。
治療の目的などによって必要な治療回数や推奨される投与量も異なりますので、治療に興味を持った方は、まずは具体的な費用などを確認するためにも、一度クリニックに相談してみると良いでしょう。
まだ多方面で研究が進められている治療でもあるため、1か所だけではなく複数のクリニックで相談してみて、納得できると感じたクリニックでの治療を選択する事をおすすめします。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹