コラム
COLUMNエクソソームと幹細胞培養上清液の違いは何?
近年、再生医療の中でも特にエクソソームの効果が注目を浴びてきている事などから「エクソソーム点滴」を始めとした治療を行うクリニックが増加していますが、エクソソーム点滴には「幹細胞培養上清液の点滴」と記載されているケースが殆どとなっています。
エクソソームと幹細胞培養上清液はどう違いがあるのかなどについて詳しく解説いたします。
エクソソームとは
エクソソームとは、細胞外小胞と呼ばれるものの一つであり、簡単に言えば細胞の中身の一部が小さな塊となって細胞の外に放出されたものです。
なぜエクソソームが近年注目を浴びているのかというと、エクソソームが細胞に付着するとその細胞の修復や、細胞の寿命に関係していると言われる「テロメア」を延長させるというような作用を持っている事が分かってきており、細胞レベルからの「若返り」を実現させる事ができる成分として考えられるためです。
近年までエクソソームは何の働きをしているかが良く分からず、細胞の培養などを行う上での「ゴミ」のようなものとして扱われていたのですが、人体にとってとても有用な成分であることが判明してから盛んに研究や利用が行われるようになってきました。
エクソソームは体の中でも豊富に作られている
エクソソーム自体は珍しいものではなく、実は体の中で沢山作られている成分です。
どのように作られているかというと、細胞が周囲から栄養などを取り込む際に作られる「エンドソーム」とよばれるカプセルが、逆に細胞の中にある成分を取り込んでから細胞の外に放出される事によって出来るもので、放出されたエクソソームが更に周囲の細胞にくっついて影響を与える事を「パラクライン効果」と呼びます。
エクソソームは細胞の中身の一部が放出されたものですので、どの細胞から作られたかによって期待される働きが大きく異なります。
健康な細胞から作られたエクソソームは周囲の細胞の代謝を促進させたり、修復によって若返らせるといったような効果が期待できる一方で、例えば癌細胞から放出されたエクソソームは周囲の細胞も癌化させてしまう可能性がある事も分かっています。
このように、エクソソームは単純に「体にとって良い影響を与えるもの」ではなく、作られた細胞の情報を伝える事で影響を与えるものですので、治療などで用いる際にはどういった細胞から作られたものであるのかなどが非常に重要となります。
幹細胞培養上清液とは
幹細胞培養上清液とは、体から採取された「幹細胞」を培養によって増殖させた際の「培養液」から細胞そのものや不純物を取り除いたものです。
幹細胞とは「細胞分裂によって増殖する能力」と「分化によって他の細胞に変化する能力」を持った細胞の事で、例えば「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞は、筋肉や皮膚の細胞を作り出す事ができます。
この幹細胞に適切な栄養を与える事で細胞分裂が繰り返されて増殖していくのですが、幹細胞が細胞分裂を行う際には、周囲に成長因子などの各種サイトカインやエクソソームなどを放出します。
これは、細胞分裂によって新しく細胞を作ると同時に周囲にある細胞の働きを促進する事などで組織の健康を保つためと考えられ、これにより幹細胞培養上清液の中には豊富なサイトカインやエクソソームが含まれることとなります。
つまり、幹細胞培養上清液とはエクソソームを含む「細胞に影響を与える様々な因子」が豊富に含まれたものであるといえます。
点滴などで使用されているのは主に幹細胞培養上清液
エクソソームによる若返り効果が注目されるようになってから、エクソソーム点滴などの治療を行うクリニックが増えてきていますが、こうした治療の殆どは幹細胞培養上清液の点滴によるものです。
というのも、エクソソーム自体は幹細胞培養上清液を遠心分離にかけるなどで精製していけば単体で抽出していく事が可能とはなりますが、そこまでの対応を行うと非常に高額な薬剤となってしまうため、基本的にはエクソソームの濃度が高い状態の幹細胞培養上清液を薬剤として使用するという形になっているのです。
エクソソーム単体を抽出して点滴を行う場合と、幹細胞培養上清液で点滴を行う場合それぞれのメリットは下記のようになっています。
幹細胞培養上清液として点滴を行うメリット
幹細胞培養上清液中にはエクソソームだけではなく、細胞の代謝を促進する成長因子などのサイトカインやケモカインなども豊富に含まれています。
こうした成分が細胞に影響を与える事で、より効果的に細胞の活動を促す事が可能となり、高い健康効果や美容効果を期待する事ができます。
また、エクソソーム単体を抽出する事を考えればそれよりも低価格で利用する事が可能です。
エクソソーム単体(高純度)での点滴メリット
幹細胞培養上清液中に含まれるサイトカインは細胞への働きかけが強いため、逆に言えば多量に投与してしまうと眩暈などの副作用が生じてくる可能性があります。
そのため、幹細胞培養上清液は薬剤によって一回の治療で投与可能な上限量が定められており、一定量以上を点滴する事はできません。
一方でエクソソーム単体であればこうした副作用を避ける事が出来るため、より多くの量での投与が可能となり、エクソソームに期待されるような作用を高いレベルで利用する事ができます。
ただし、そもそも幹細胞培養上清液として限界量を投与するだけでもかなり高額であり、点滴治療については定期的に繰り返していく事が推奨されますので、基本的にはエクソソーム単体での使用にこだわる必要は無いといえるのではないでしょうか。
エクソソームの効果を期待する幹細胞培養上清液点滴では、培養する細胞の質が重要
前述の通り、エクソソームは作り出された細胞の影響を強く受けるため、治療によって良い効果を得るためにはどんな幹細胞が培養されて作られたかという点が非常に重要です。
高い効果や安全な治療が期待できるものとしては、「乳歯歯髄由来」または「臍帯血由来」の幹細胞培養によって得られたものが挙げられるでしょう。
乳歯歯髄由来幹細胞
乳歯歯髄由来幹細胞とは、大人の歯に生え変わる前の子どもの歯の内部にある歯髄から採取された幹細胞です。
乳歯は当然ではありますが若く細胞分裂が活発な年齢の人物から採取された物であり、また硬い歯の中に含まれた細胞であることから、細胞が傷ついて損傷している可能性などが非常に低い点から、健康的な「若返り効果」を持ったエクソソームを得られる可能性が高いと考えられます。
また、乳歯は自然と生え変わりによって抜けるものである事から採取における倫理的な問題も少なく、歯科医との連携などにより身元の確実な安全性の高い細胞を採取しやすいという点も利点といえます。
臍帯血由来幹細胞
臍帯血とは出産時に母親と胎児を繋ぐ臍帯(へその緒)から採取できる血液で、臍帯は新生児の組織と分類されるように、若い細胞である事が期待できます。
幹細胞培養上清液に含まれるエクソソームの濃度はマーカーで検査を行う
同じ種類の幹細胞から得られた幹細胞培養上清液であっても、その培養方法などによって上清液中に含まれるエクソソーム濃度は異なります。
点滴治療でエクソソームの美容、健康効果を期待するのであれば、やはりある一定状のエクソソームが含まれている必要がありますので、それを確認する方法がマーカーによる検査です。
エクソソームはCD63、CD9、CD81といった抗原によるマーカー検査である程度濃度を検査する事が可能なため、十分な治療効果を期待するのであればこうした検査を適切に行い、十分なエクソソーム濃度が確認されている幹細胞培養上清液での治療を受ける必要があります。
幹細胞培養上清液中に含まれるエクソソーム以外の成分について
幹細胞培養上清液中には、エクソソーム以外にも様々な働きの成分が含まれています。
特に効果が期待できるものが各種成長因子で、例えば下記のような成長因子による効果が期待できます。
EGF
上皮細胞成長因子とよばれるもので、上皮つまり肌の角質層の細胞における代謝を促進します。
肌のターンオーバーが促進されるため、健康な肌質を手に入れるために効果的です。
FGF
線維芽細胞成長因子と呼ばれ、真皮内などに存在しているコラーゲンなどの繊維組織を作り出す細胞の働きを促進します。
真皮内におけるコラーゲンの増殖などを促す事で、肌のハリを作りシワなどのエイジングサインをケアする効果が期待できます。
VEGF
血管内皮細胞成長因子とよばれるもので、血管の細胞を強固にしたり、新しい血管の作成を促進します。
血流が改善される事で全身の代謝が向上し、生活習慣病の予防や改善などにも効果が期待できます。
城本クリニックでは高品質な幹細胞培養上清液を点滴として使用しています
城本クリニックでは、様々な薬剤を比較した上で、エクソソーム濃度がしっかりと検査されており高い効果が期待できると判断された「乳歯歯髄由来幹細胞培養上清液」の薬剤を点滴治療としてご提供しています。
薬剤中に含まれるエクソソーム濃度が高く、また日本人の乳歯歯髄から採取された幹細胞によって製造されている事が明確なため、安全かつ効果の高い治療が可能です。
また、幹細胞培養上清液は適切な取り扱いを行わなければ効果が低下してしまう薬剤ですが、城本クリニックではマイナス80度で薬剤の保管を行う特別な冷凍庫などを導入し、十分な治療効果が発揮される治療体制を整えております。
幹細胞培養上清液によるエクソソーム点滴はまだ少し高価な治療ではありますが、それだけに高いエイジングケア効果が期待できる治療ですので、ご興味をお持ちの方は是非一度お気軽にご相談いただければ幸いです。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹