コラム

COLUMN再生医療で利用される「幹細胞」とは何か

これまでの「症状を抑える」ために行われる治療と異なり、損傷した組織を直接修復していくというアプローチで行われる再生医療の研究が日夜進められていますが、再生医療がどのようなものかを理解するために必須となるのが「幹細胞」についての知識です。
今回は再生医療で利用される「幹細胞」とはどのようなものなのか、詳しく解説いたします。

幹細胞とは

幹細胞は、細胞の中でも「自己複製能」と「分化能」をあわせもつものとされます。

自己複製能とは何か

幹細胞のもつ特徴の一つである「自己複製能」とは、細胞分裂によって自分のコピー細胞を作り出す能力です。
幹細胞は周囲から細胞の材料を取り込み、自身のDNAを複製して分離を行う事で、自分自身と全く同じコピーの細胞を作り出す能力をもちます。

分化能とは何か

分化能とは、簡単に言えば特定の性質を持った細胞に変化する能力の事です。
人間に限らず、あらゆる生物の細胞は決まった役割をもっており、人間であれば筋肉と皮膚や血液の細胞は異なる性質のものです。
幹細胞は自己複製能による増殖と分化能で特定の機能をもった細胞になれるという性質によって、体内の損傷した部分を修復したり、古い細胞と新しい細胞を入れ替えて体の健康状態を維持しています。

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幹細胞には2つの種類がある

幹細胞には「多能性幹細胞」と「組織幹細胞」の2種類があります。

どの細胞にでも分化を行える「多能性幹細胞」

多能性幹細胞というのは、簡単にいえばどの細胞にでも「分化」する事ができる、いわゆる万能な細胞の事です。
筋肉や神経組織を作る事も可能ですし、血液や内臓、脳や骨など体中のあらゆる細胞に変化する事ができるため、多能性幹細胞を作る事は再生医療の研究でも非常に重要な事となっています。

そして、多能性幹細胞は生まれてきた人間の体内には存在していません。
人間の細胞が多能性幹細胞の性質を持つのは受精卵から一定の期間のみで、受精卵から細胞分裂が行われ、その後着床して胎児の体が形成され始める頃には多能性がなくなっていきます。
ちなみに、受精卵は細胞一つから様々な体の組織を作り出す事ができる「多能性」どころか、人間一人を作り出す事ができる能力を持つため、「全能性」と区別されます。

多能性幹細胞と一般的に呼ばれるものは「ES細胞」「ntES細胞」「EG細胞」「iPS細胞」という4つの種類があります。

ES細胞

ESとは「Embryonic Stem」の略で、「胚性幹細胞」と呼ばれます。
ES細胞は受精卵の内部で細胞分裂が繰り返され、着床が行える段階の「多能性」がまだ保たれた状態の幹細胞を、多能性が失われないように特殊な方法で培養していく事で得られる細胞です。
多能性幹細胞としての性質により、誘導を行えば体内のあらゆる組織を作り出す事が出来るという点からそれまでは治療の方法が無かったパーキンソン病などの治療が可能になると注目を浴びて研究が進められてきました。

しかし、一方でES細胞については倫理的な面で問題視される部分もあり、受精卵を「生命のはじまり」とみなすかどうかで、命そのものを実験材料にしているものであるとも考えられるため、国によってはES細胞の研究を禁止しているケースもあります。
日本ではES細胞は不妊治療における「体外受精」を目的として保存されている凍結胚が、治療が不要となって破棄される場合に限りこれを使用してES細胞を作る事が許可されるものとなっています。

また、ES細胞の培養によって得られた細胞には受精卵段階でのDNAが含まれているため、移植を行った際に拒絶反応が引き起こされるリスクも存在します。

ntES細胞

ES細胞が受精卵から作られるのに対し、ntES細胞は受精前の卵子から細胞の核を取り出し、変わりに体から採取した細胞の核を入れて「クローン胚」というものを作ってから培養を行う事で得られる多能性幹細胞です。
ES細胞とは異なり、受精前の細胞をベースにしている事から倫理的な問題が少ない点や、自身の細胞から得られた核を用いているため、治療に利用した場合の拒絶反応がおこるリスクが少ない点が優れているとされます。

一方で、ntES細胞を作るためには卵子の提供が必要となる事から容易に作る事はできません。

EG細胞

Embryonic germ cellの略で、日本語では「胚性生殖幹細胞」という意味です。
始原生殖細胞という精子や卵子の元となる細胞から作り出されるもので、ES細胞と同じように多能性幹細胞の性質を持ちます。
ただし、EG細胞を作るための「始原生殖細胞」はヒトの場合は妊娠5~9週の死亡胎児から得られるものであるため、倫理的な問題などからあまり研究は行われていません。

iPS細胞

induced Pluripotent Stem Cellの略で、日本語では「人工多能性幹細胞」となります。
体の中にある細胞を取り出し、ここにリプログラミング因子と呼ばれるものを注入すると、細胞がES細胞と同じような多能性を持つようになる事が発見されて作り出されたもので、京都大学再生医科学研究所の山中伸弥らによって発見されました。

ES細胞のような倫理的な問題が無く製造を行いやすい点や、治療に用いる場合には治療を受ける本人の細胞から作り出す事が出来るため、拒絶反応などのリスクも無いといった点なども大きな利点となっています。
一方でiPS細胞には癌化するリスクなどが報告されており、より安全に治療へと利用するための様々な研究が進められています。

限定された細胞への「分化」が可能な「組織幹細胞」

組織幹細胞は私たちの体の中にある幹細胞で、体性幹細胞ともよばれます。
ES細胞やiPS細胞のように「どの細胞にでもなれる」というものではなく、ある程度の決められた細胞に変化する事ができる、限定された分化能を持った幹細胞を総称して組織幹細胞といいます。

組織幹細胞が分化できる範囲は、例えば造血幹細胞であれば血液関係の細胞、神経の幹細胞であれば神経系の細胞というように、狭い範囲であると考えられていましたが、1960年代に骨髄から発見された「間葉系幹細胞」は、神経や骨、筋肉などいくつかの広い範囲の細胞に分化する「多能性」が見られる事が判明し、更に2000年代に入るとこの間葉系幹細胞が脂肪細胞などからも得られると分かってから、一気に治療への応用が進められてきたという背景があります。

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幹細胞に似た「前駆細胞」について

増殖と分化の能力を持つ細胞として、幹細胞に似た性質のものに「前駆細胞」があります。
前駆細胞と幹細胞の違いは増殖できる回数や分化によって作る事ができる細胞の種類で、幹細胞が無限に自己増殖を行えるのに対し、前駆細胞は限られた回数しか分裂を行えず、分化できる範囲も幹細胞と比べて少ないものとなっています。

また、基本的に前駆細胞は幹細胞から作り出されるもので、幹細胞が各種の前駆細胞を作り、前駆細胞が最終的に様々な性質を持つ細胞を作るという流れになっているため、前駆細胞は細胞を生成する途中経過ともいえます。

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現在主にアンチエイジング治療などで利用されるものは組織幹細胞

幹細胞を用いた再生医療は、実際にアンチエイジングを目的とした治療などでも導入が行われています。
主な治療法としては自分自身の幹細胞を培養して投与するものと、幹細胞の培養によって得られた「幹細胞培養上清液」を活用するものがあります。

自分自身の幹細胞を培養して投与する治療法

幹細胞は私たちの体の中に多数存在していますが、体の成長が終わると静止状態に入って基本的に殆ど分裂をしなくなる事がわかっています。
なるべく活動をしないで状態を維持し、特定の因子などによって活性化されると盛んに分裂を行って新しい細胞を作り出すのです。

一方で体内の幹細胞は加齢におけるストレスなど様々な要因によって損傷していくもので、生まれた時は約60億個あるものが、20歳で10億個、40歳で3億個、60歳では1.5億個と減少していき、これが加齢によって代謝が低下していく理由の一つになっています。

そこで、体の中にある幹細胞を一度外に取り出し、人為的に培養してから再投与を行おうという方法が、一つ目の治療法です。
培養によって増殖した幹細胞を体内に戻す事で損傷した組織の修復が促進され、また細胞の代謝能力も回復するため、非常に強力な若返り効果を期待する事ができます。

この治療は一度培養するための幹細胞を採取する必要があるため、まずは脂肪を少量採取し、脂肪の中に含まれる幹細胞を専用の施設で培養してから再注入するという方法で行われます。
脂肪の採取や培養が必要となるためすぐに投与を受ける事はできない点や、専用の施設における培養が必要となるため高額となりやすい点から手軽に受けやすいとはいえませんが、副作用も殆どなく確実なエイジングケア効果が得られるとして人気となっています。

幹細胞培養上清液を用いた治療法

幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養する際に使用している「培養液」の上澄みの事です。
幹細胞が培養される際には、細胞分裂によって新しい細胞が作られると同時に、細胞の活動に関わる様々な成分が放出される事が分かっています。

こうした成分を有効活用して治療を行うものが「幹細胞培養上清液」を用いた治療で、培養された幹細胞そのものは取り除かれた上澄みの液体部分が使用されます。

幹細胞培養上清液にはサイトカインやエクソソームとよばれる成分が豊富に含まれており、一方でDNA情報を持つ細胞そのものは除外されているため、治療を受ける本人以外の幹細胞をベースに作られた上清液でも問題なく治療に使用する事ができます。
そのため、細胞の培養などを待つ必要はなく、用意された上清液を点滴などで投与するだけといった手軽な治療法であるため、多くの医院で導入が進められています。

サイトカインとは

幹細胞培養上清液中に含まれる有効成分の一つ「サイトカイン」は、体内にある細胞の代謝を促すなどの性質を持つものです。
サイトカインと分類されるものの中の一つにEGFやFGFといった成長因子と呼ばれるタンパク質があり、例えばEGFは表皮細胞の増殖を促してシミなどのトラブルをケアするための効果、FGFは線維芽細胞という真皮内のコラーゲンなどを作り出す細胞の活動を促して肌にハリを作るといった効果などが期待できます。

エクソソームとは

エクソソームは細胞内に含まれるmRNAなどの情報を運ぶもので、mRNAは細胞が成長因子といったタンパク質などを作り出す際の設計図のような働きをするものです。
代謝が活発な細胞から作られたエクソソームは、受け取った細胞の活動を活発にしたり、細胞の修復を促すといった作用があるため、乳歯や臍帯血といった年齢の若い細胞由来の幹細胞培養上清液に含まれるエクソソームは細胞の若返り効果を持つと考えられています。

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研究が進む再生医療

幹細胞の発見から日々研究が進められている再生医療ですが、実際に治療を受ける方も増えてきてその効果や最適な治療法もより明確になってきており、将来的には何歳になっても若々しい健康的な体を維持できる世界が訪れるのではないかという期待が高まっています。
まだ新しい治療のためどうしても高額になりやすい分野ではありますが、早めに治療をうける事でより健康的な状態を維持し続けやすくなる事が考えられますので、興味をお持ちの方は是非、まずは一度治療に詳しい医師のいる医院に相談されてみてはいかがでしょうか。

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本コラムの監修医師

1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック

医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹

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