コラム
COLUMNインプラントバッグによる豊胸術のダウンタイムについて
大きく魅力的なバストを手に入れるために豊胸術を受けたいと思っていても、術後の痛みやダウンタイム、副作用などが心配で治療を躊躇してしまうという方は多いのではないでしょうか。
とくにインプラントバッグ(シリコンバッグ)による豊胸では皮下に異物を入れる治療という事もあって、術後経過やメンテナンスについての心配など、不安に感じるポイントも多いかと思います。
そこで今回は手術後のダウンタイムについて、よくいただくご質問への回答などと共に詳しく解説いたします。
インプラントバッグによる豊胸術とは
インプラントバッグとは、シリコンなどで出来た医療用バッグで、豊胸用のものは適度な柔らかさを持った半球状をしています。
このバッグをワキなどから大胸筋周囲などに挿入する事で、バストを内側から持ち上げてボリュームアップさせる手法がインプラントバッグによる豊胸術です。
バストの奥側にバッグが挿入されるため、表面側から触っても直接バッグに触れるものではなく、またバッグ自体が非常に柔らかい素材で作られているため触ったりしても違和感はなく、姿勢が横になったり起き上がったりと変化した時も非常に自然な動きになるため、仕上がりとしての満足度は非常に高い豊胸術です。
インプラントバッグによる豊胸術では、「バッグ周囲の組織が癒着して安定するまでの変化」「切開によって出来た傷(縫合跡)が塞がるまでの変化」という点でのダウンタイムが必要となり、ダウンタイム後は「バッグの品質を保つためのケア」が必要となります。
バッグ周囲の組織が安定するまでの経過
インプラントバッグの挿入はバッグを挿入する箇所の組織を一度剥がして空間を作り、そこにバッグを挿入するという方法にて行われます。
そのためバッグが挿入された直後は周囲に空間が出来ている状態で、バッグの位置を適切な位置に安定させるためには2~3日の間、バストバンドを装着するなどして圧迫と固定をする必要があります。
術後はまずしっかりと圧迫固定する事で組織の癒着を行い、バッグがずれない状態にする必要があるため、この間は入浴はもちろんシャワーを浴びる事なども制限されますし、重い荷物を持ち運ぶなどの行為も避ける必要があります。
また、術後2日目くらいからは痛みも最も強くでやすいタイミングで、強い筋肉痛のような痛みが生じやすいでしょう。
痛み止めなどを服用する事で和らげつつ、とにかくあまり動かず安静に過ごす事で綺麗に組織がくっつくように過ごす事が大切です。
圧迫固定によりインプラントバッグの位置が安定する状態となったら、バストバンドを外す事ができます。
固定を外す事で動きやすくなりますが、やはり大きく動かしたり強い刺激を与えたりしてしまうと組織の癒着がはがれてバッグの位置がずれるなどの可能性もありますので、極力安静に過ごす必要がある点は変わりません。
痛みも1週間、2週間と時間が経過する中で徐々に軽減していきますが、1ヶ月程度までは軽い筋肉痛のような痛みが続く場合もあります。
このように徐々に状態は安定していくのですが、この間のケアとして注意しなくてはならないのが「バッグが挿入された箇所に力がかかる事をなるべく避ける」というものです。
特に注意が必要なのが寝る際の姿勢で、うつ伏せや横向きなど、胸が圧迫されるような姿勢はバッグ挿入箇所に負担がかかって位置がズレてしまうなどのトラブルに繋がる可能性があります。
術後2か月程度が経過すれば殆ど心配する必要はなくなりますが、挿入したバッグが完全に馴染んで安定するまでには半年程度かかるため、念のため半年程度は寝るときの姿勢などを含めて強く圧迫されるような状態は避けた方が良いでしょう。
半年ほどが経過するとバッグ挿入による違和感もほぼ無くなり、自然な状態で過ごしやすくなります。
切開箇所のダウンタイム
バッグを挿入するためにはワキなどを切開し、手術後はその部分が縫合された状態となります。
術後1週間程度は縫合の糸が残るため、手術直後は治療した事がはっきりと分かる状態です。
術後1週間程度が経過して傷口が癒着された事が医師によって確認されたら、抜糸を行い縫合の糸がはずれます。
ただし、この時はまだ傷跡としてはくっきり見えている状態で、傷跡はその後1年程度をかけて徐々に薄くなっていく形となります。
術後は傷口の保湿をしたり、傷口をなるべく動かさないようにしたりなど適切なケアを行う事で、綺麗な状態に回復していきます。
基本的にワキのシワなどにあわせて切開が行われるため傷跡もかなり目立ちにくい状態にはなりますが、適切なケアが行われなかった場合や体質的にケロイドが出来やすい場合、医師の縫合技術が低い場合などでは目立ちやすい跡として残ってしまう可能性もありますので、技術力の高い医師による治療を受ける事や術後のケアを適切に行う事を心がけましょう。
バッグの挿入位置によるダウンタイムの違い
インプラントバッグでは、乳腺と大胸筋の間である「乳腺下」にバッグを入れる方法と「大胸筋下」に挿入する方法があります。
大胸筋化はバッグがより深い位置に入るため、触った時の不自然さを生じにくいなどのメリットもありますが、挿入時に筋肉を剥がすために痛みなどがより強くでてしまいやすいといったデメリットや、挿入できるバッグの大きさが制限されるなどの面もあります。
どちらに挿入するかはバッグの種類やどの程度のサイズアップをしたいかなどによって変わりますので、医師とよく相談して決めるようにしましょう。
術後に発生する可能性のあるカプセル拘縮や石灰化について
インプラントバッグでは、術後にカプセル拘縮や石灰化というトラブルが発生する事があります。
1割程度の確立で生じるといわれるカプセル拘縮
カプセル拘縮とはバッグの周囲に硬いコラーゲンなどによる被膜が作られる事でバッグがゆがんだり硬くなってしまう症状で、インプラントバッグによる豊胸術では10人に1人くらいの確立で発生するトラブルです。
拘縮が出来てくると胸の内側がチクチクとするような痛みを感じたり、しこりや硬さを感じるようになります。
カプセル拘縮が発生する原因は、バッグが体に「異物」と判断されてしまう事によって、異物から体を守ろうとして被膜を作るというもので、術後2~3カ月頃から出来るケースが多いですが、中には長期間問題が無かったのに10年以上が経過してから発生するというケースもあります。
拘縮が発生した状態を放置しておくと徐々に被膜が厚くなっていき、それが原因となってバッグが圧迫されるなど症状が悪化してしまうため、拘縮を軽減するためのマッサージを行うなどで改善を目指すか、場合によってはバッグを抜去するというような選択をする必要が生じる事もあります。
カプセル拘縮が発生するかどうかについては体質による影響も大きいのですが、現在多く使用されているインプラントバッグの「モティバ」などではバッグの表面を均一かつ滑らかな状態にする事で拘縮反応が生じにくい作りとなっているなど、技術の進歩により以前よりも大幅にリスクは低減されています。
拘縮がおきたからといって手術自体が失敗というものではありませんが、早めに適切なケアを行う事がトラブル解消のためのポイントとなりますので、硬さや痛みを感じる場合は担当の医師に相談しましょう。
稀なケースの石灰化
インプラントバッグによる豊胸術に限らず、鼻やあごの整形などでプロテーゼを挿入した際などにも発生する可能性がある副作用に「石灰化」があります。
これは体内に挿入したインプラントバッグの周りにカルシウムの結晶が付着して引き起こされるもので、硬いしこりのような感触になる他、エコー検査などで内部を確認する事が出来なくなるといった問題が生じます。
カプセル拘縮より硬さは少なく、生じる可能性も稀であり、どちらかというと20年以上など長い期間バッグの挿入が続いていると生じてくるトラブルです。
石灰化が直接体に害を及ぼすというものではありませんので、バッグを抜去しなくてはならないというものではありませんが、やはり硬さを感じるようになったら一度担当の医師と相談してどのようにケアするかを検討しましょう。
結局の所、治療後はどの程度の期間安静にする必要があるのか
インプラントバッグによる豊胸術のダウンタイムは、おおよそ下記のような目安での流れとなります。
治療の内容や体質、術後のケアの適切さなどによって期間は異なりますので、こちらはあくまでも目安として、実際のダウンタイム期間や必要となるケアについては治療を行う医師の指示をきちんと守る事が大切です。
手術当日
インプラントバッグによる豊胸術は静脈麻酔などで行うため、術後はしばらくは意識が朦朧とした状態が続くでしょう。
ある程度意識が回復してから帰宅する形となりますが、手術当日はとにかく安静にしてしっかりと休むようにしましょう。
家が遠いような場合は、出来ればクリニックの近くに宿泊するなどしてなるべく移動の負担も減らした方が良いでしょう。
麻酔が完全にきれてくると痛みを感じてくるようになるため、処方される痛み止めや炎症止めを医師の指示に従ってしっかりと服用するようにしましょう。
術後2~3日
痛みが最も強く感じるのは、術後2日目あたりからです。
出来る限り食事をしっかりとりながら、処方された薬を適切に服用して引き続き安静に過ごしましょう。
バストバンドなどで固定がされている期間ではありますが、無理に動いたりしてしまうと固定がズレてしまう可能性もありますのであまり体を大きく動かしたりしないようにする必要があります。
バストバンドなどの固定を外すタイミングはしっかりと医師の指示を守るようにしましょう。
固定を外せる状態となればある程度体を動かしても大丈夫になりますので、傷口を避けてかるくシャワーを浴びる程度であれば可能となります。
術後1週間程度
切開後の傷口が癒着して塞がっている事を医師が確認し、問題がなければ抜糸を行います。
抜糸が終われば全身でシャワーなどを浴びる事も可能となりますので、ある程度日常生活が送りやすくなるでしょう。
仕事への復帰などは、出来れば抜糸が終わってからのタイミングが良いでしょう。
初期のバストバンドなどによる固定を外したあたりから一応動きやすくはなりますが、抜糸前に無理に動くと傷口が綺麗に塞がりにくくなってしまうといった可能性も高くなりますので、少なくとも抜糸が完了するくらいまでは完全に安静な状態を続けた方が良いでしょう。
尚、抜糸が終わっても傷口が完全に回復しているわけではありませんので、激しい運動などはNGです。重い荷物を持つような事も避けましょう。
また、術後の腫れやむくみ、内出血といった症状は続いている状態となるため、入浴やサウナなどの血流が促進される行為も避けた方がよいでしょう。
術後1カ月程度
術後の痛みや内出血については大体2週間程度で落ち着き、むくみは2週間頃をピークに徐々に軽減していきます。
1ヶ月程度すればある程度組織が回復してきており、うつ伏せになるなども行って大丈夫な状態となります。
とはいえ、まだ完全に状態が落ち着いているわけではありませんので可能な限り圧迫されるような刺激や大きく動いてしまうような行為は控えておきましょう。
尚、術後2週間くらいから、バッグのカプセル拘縮を防ぐためのマッサージを指導される場合があります。
医師の指導に従って、しっかりとマッサージのケアを継続していきましょう。
術後3か月~半年程度
術後3か月程度までは拘縮を防ぐためのマッサージが必要となりますが、この辺りには組織も安定してくるため、特に何かケアをする必要はなくなります。
また、バッグが完全に馴染んでくるため、違和感なども感じず自然な自分の胸と実感できるようになってきます。
術後1年~2年
体質などにもよりますが、切開箇所の傷跡が完全に目立たなくなっていくまでには2年程度が必要となる事もあります。
傷跡が目立たなくなることで、ダウンタイムも完全に終わりといえるでしょう。
術後10年程度
バッグによる豊胸術の場合、挿入したバッグの状態に問題がないかなど定期的に検診を受ける事が推奨されています。
また、挿入するバッグの種類などにもよりますが10年程度が経過したあたりを一つの目安として、バッグの入れ替えなどが必要となる事もあります。
長期的にどのようなケアが必要となるか等をしっかりと医師と相談し、納得できる状態で治療を受けるようにしておきましょう。
安心して治療を受けるために
インプラントバッグによる豊胸術は美容整形術の中でも体への負担が大きく、ダウンタイムも長めの治療です。
なるべく負担を軽減し、長期的に良好な結果を得るためには、やはり信頼できる医師による治療を受けるという事が一番大切です。
特にバッグ豊胸は長期に渡って定期的な検診なども必要となってくる術式ですので、出来れば複数の医師のカウンセリングを受けるなどして、技術面だけではなく精神面も含めて安心して任せられると感じる医師をじっくり選ぶようにした方が良いでしょう。
城本クリニックの医師は技術面はもちろんの事、長期的に安心していただけるような治療の提供を全力で心がけておりますので、豊胸を検討されている方は是非一度お気軽にご相談いただければ幸いです。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹