乳ガンの基礎知識
CONSULTATION 乳ガンとは
乳腺に生じる悪性腫瘍には、乳ガンと肉腫(にくしゅ)の2種類がありますが、後者の肉腫の発症は極めてまれです。
乳ガンは現在、女性の悪性腫瘍では肺ガン、大腸ガン、胃ガンとならんでとても多いものとなりました。乳ガンでお悩みの患者の平均年齢は約50歳前後で、30歳以上の女性ならば、誰もが乳ガンにかかる危険があると自覚しておく必要があります。
乳ガンのリスクとして、出産の経験がないこと、母親や姉妹などに乳ガンの患者がいることなどといわれています。
しかし乳ガンの発ガン原因はまだ解明されておらず、これといったリスクがないにも関わらず乳ガンになってしまう患者は多くいます。
最近は若い20代の患者も珍しくなく、また高齢化に伴って80歳を超えるような高齢の患者も増加傾向にあります。
乳ガンは成人女性なら誰でもなりうる病気なのです。
乳ガンには大きく分けてリンパ管や血管に入り込んで転移する性質をもった浸潤ガン(しんじゅんガン)と、そのような性質をもたない非浸潤ガンとがあります。
多くの乳ガンは浸潤ガンのことをいい、乳ガンは卵巣ホルモンと密接な関係があるといわれていますが、生理が終わっていない若い患者では30%程度、閉経後の患者の乳ガンでは約70%が卵巣ホルモンレセプター(受容体)が陽性で、これらの乳ガンは内分泌療法(ホルモン剤による治療)が有効です。
CONSULTATION 乳ガンの症状
乳ガンは乳腺(母乳をつくるところ)に発生する悪性腫瘍です。
症状は、しこり、痛み、血液が混じったような分泌物がでる、乳首のただれ、皮膚のくぼみ、赤くはれたりオレンジの皮のように毛穴が目立つ、ワキの下のしこりなど、さまざまです。
乳ガンの症状は痛みを伴わない腫瘤(しゅりゅう:しこり)が90%以上と圧倒的に多く、最近では2cm以内の早期乳ガンを自覚して来院される患者が増えています。
これは、自己検診など、乳ガンに関する啓発が進んだ結果だと思われますが、このように検診で早期発見される患者様の数は決して多くはなく、残念ながら5%以内にすぎません。
また、乳頭から出血するような患者も数%います。下着などが汚れていて気がつかれることが多いようです。この他、乳首や乳輪のただれを症状とする患者様が少数います。
乳ガンの初期には食欲が減ったり体調が悪くなるなどの全身症状はほとんどありませんが、気づかずにそのまま放置しておくと、乳腺の外にまでガン細胞が増殖し、血管やリンパ管を通って全身へと広がっていきます。
乳ガンの発見が遅れると腰痛などの骨転移や、呼吸困難などの肺転移の症状で来院される患者も決して少なくはありません。
乳ガンの早期発見には、ひとりひとりの疾患に関する知識と乳房のわずかな変化を見逃さないことが重要であるといえます。
CONSULTATION 乳ガンの事情
日本女性が多くかかりやすいがんが乳ガンです。
女性の20人に1人が乳ガンになるといわれ、2007年に乳ガンでなくなった女性は11,323人(厚生労働省人口動態統計)で、その約半数が30代から50代でした。
早期発見のために、自己検診や定期健診が必要です。
壮年期女性のがん死亡原因のトップ
今、日本女性の20人に1人が乳ガンにかかるといわれています。
乳ガンで亡くなる方は年々増加し、現在では1年間に約1万人です。
ここ30年の乳ガンの急激な増加は、食生活やライフスタイルの変化がエストロゲン(女性ホルモン)の分泌に影響しているためとみられていますが、乳ガンは女性の壮年層(30~64歳)のがん死亡原因のトップとなっているにも関わらず、とても無関心な人が多いのも現状です。
最もかかりやすいのは40代
「乳ガンはまだ私には関係ない」と思っていませんか?
乳ガンにかかる人は30代から40代にかけて急増します。ピークは40代後半です。
「閉経後は大丈夫」「50歳過ぎたら乳ガンにならない」ということもありません。
また、若いからといって油断はできません。乳ガンは何歳でもかかる可能性があります。
家族や親戚に乳ガンがいない、出産・授乳経験があるから大丈夫、ということもいえません。
乳ガンにならないといえる人は一人もいないのです。
早期発見の重要性
残念ながら、今のところ乳ガンの予防法は見つかっていません。
しかし、早期発見であれば約90%の人が治癒します。
決して恐い病気ではありませんので、早期発見のために、セルフチェックや検診が大切です。