コラム
COLUMN眼瞼下垂の手術後に起こる後遺症とは? 対処法もあわせて解説
眼瞼下垂(がんけんかすい)の治療は主に眼瞼挙筋の前転などによる手術によって行われますが、切開を行って筋肉などに人の手を加える以上、手術後のトラブルや後遺症などが心配という方もいるのではないでしょうか。
手術後には腫れやドライアイなどの不具合が生じやすくなりますが、手術後の不具合の多くは時間の経過とともに収まります。
しかし、時間が経っても収まらない後遺症がないわけではありません。この記事では、眼瞼下垂の手術後に起きる後遺症を中心に解説します。
眼瞼下垂手術後の不具合イコール後遺症ではない
眼瞼下垂の手術後に起きる不具合はすべてが後遺症というわけではありません。
後遺症とは将来にわたり残るもの
後遺症とは、病気や怪我の治療後に一部の症状が消えずに残ったり、跡が残ったりすること、またその症状を指す言葉です。したがって、時間の経過とともに消える前提で語られるダウンタイム中の不具合は厳密には後遺症ではありません。しかし、そのまま残ってしまうようなら後遺症として考えることができます。
後遺症と呼ぶ症状だけが問題ではない
眼瞼下垂の手術後に起きる不具合の多くは徐々に消えるものであり、後遺症が頻発するわけではありません。しかし、後遺症がないわけではないため、手術を考えるならしっかりと検討することが求められるでしょう。また、後遺症とは呼べないダウンタイム中の不具合では、一般的には週単位から1~2ヶ月で消えるケースがほとんどです。
しかし、ケースによっては消えるまでに半年程度かかることがあり、軽く考えるわけにはいきません。そして、その症状も人によってさまざまです。したがって、術後にずっと残り続ける「後遺症」」の症状だけが問題になるわけではないといえます。
眼瞼下垂の手術を行っている診療科には眼科や形成外科、美容外科などがあります。また、保険診療と保険外の自由診療がある点、クリニックによって採用している術式が異なる点、医師の得意分野や経験値が異なる点などの違いには注意が必要です。さらに、機能面の回復を目的とする手術と、審美性も含めて重視する手術とでは、当然の事ですが手術後の見た目に差が生じます。目元の形状は顔の見た目に大きく影響を与える部分であり、眼瞼下垂の治療で機能的には改善したとしても、見た目部分で患者自身が気になるようなら後遺症と同様に考えることもできるでしょう。
機能面だけではなく審美面でも理想的な状態を目指すのであれば、自費診療にはなりますがやはり美容外科での治療が最適といえます。
眼瞼下垂の手術後に起こり得る後遺症
眼瞼下垂の手術後に起こり得る後遺症はそれほど多くありません。ここでは、代表的な後遺症を紹介します。
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)
眼瞼痙攣とは、文字通り眼瞼=まぶたの痙攣のことです。
眼瞼下垂の手術後に起きる後遺症としては稀ですが、目の周りの筋肉が自分の意思とは無関係に痙攣を起こしてしまう眼瞼痙攣を発症することがあります。
眼瞼痙攣で痙攣を起こす筋肉はまぶたの開閉に関わる眼輪筋です。そのため、目がショボショボする、眩しいといった状況になります。
症状の重さはケースバイケースですが、徐々に重くなる可能性があるため注意が必要です。指を使わないとまぶたが開けられない、視界が狭くなって日常生活に支障をきたすといった状況になったり、さらには見た目まで悪化したりといった恐れがあります。眼瞼痙攣の治療にはボツリヌス注射が有効とされていますが、完治させる治療法ではありません。
まぶたの開き具合に問題が残る
手術した部位の傷が原因となってまぶたの開き具合、開閉動作に問題が生じるケースがあります。また、左右で開き具合に差が生じるケースもあり、気にならないレベルを超えていれば対処が必要です。
時間の経過とともに改善されるケースもありますが、様子を見ても改善されない場合は修正手術(再手術)の検討となります。
眼瞼下垂の修正手術は、手術による改善が見られないケースや元に戻ってしまったケースでも行われますが、手術を受けたクリニックに不安があるなど、状況次第では別のクリニックに依頼することも可能です。
後遺症ではない可能性が高い不具合
手術をすれば一時的な不具合が生じることは避けられないものです。眼瞼下垂の手術でも同じで、ダウンタイムを念頭に置いておく必要があります。通常は時間の経過とともに元に戻るものであり、後遺症の心配はありません。
痛みや目の違和感
術式にもよりますが、手術である以上は麻酔が切れた後に多少の痛みを感じることは珍しくありません。我慢できないほど強い痛みであれば何かトラブルが発生している可能性もあるので医師の診察を受けた方が良いといえますが、ほとんどの場合は強い筋肉痛とされる程度の痛みで、日常生活に大きく影響するようなものにはなりません。
また、手術が終わったら、麻酔が切れる前に鎮痛剤を服用することで、痛みを和らげることも可能です。痛みは最大でも2日間程度で収まるケースが多いので、その日数を超えても続くようであれば他に問題があるかもしれません。
また、物理的な力が加わったことや、手術に使用する糸により目に違和感が生じることがあります。このような違和感が2週間以上続くことは少ないといわれており、長く続くようであれば早めに受診したほうがよいでしょう。
まぶたの腫れや内出血
まぶたの腫れは眼瞼下垂の手術に付きものといえる手術後の不具合のひとつです。その多くは1週間程度で収まるといわれています。長くても2週間程度で改善されますが、ケースによっては1ヶ月以上かかるなど、個人差が大きい点に注意が必要です。また、内出血やそれによるあざが生じるケースもありますが、多くは1ヶ月ほどで気にならなくなるでしょう。
視界不良
眼瞼下垂の手術後には視界が狭くなったように感じたり、視界の一部がぼやけて見えたりすることがあります。まぶたの腫れによるものが多く、改善にかかる時間はまぶたの腫れの改善と関係が大きいです。
まぶたの開閉に支障を感じる
手術部位の傷が原因となって起こる後遺症とは別に、手術の性質そのものが理由で起きる不具合があります。まぶたを閉じにくいと感じるケースです。
眼瞼下垂の治療はまぶたを開きやすいように対処するための手術であるため、それまでと同じ感覚でいると、手術直後のまぶたに開く方向の力が加わっていると感じるケースが生じることは不思議ではありません。
ただし、1ヶ月経過しても改善が見られないケースや、どう考えてもおかしいと思えるケースでは早めの受診が求められます。
ドライアイ・涙目・目やに
まぶたが開きやすい状態が続くことによって、ドライアイになるケースがあるという点に注意が必要です。まぶたの開閉が自然になるまでの間は、乾燥予防として目薬を処方してもらうとよいでしょう。
また、外界からの刺激が増えることから涙目になるケースも多いのが眼瞼下垂の手術後です。めやにが多くなるケースもあり、刺激を抑えるためにサングラスの着用などの対策があげられます。
通常は1ヶ月程度で改善されますが、長く続くようならダウンタイムの問題ではないかもしれませんのでクリニックでの受診をおすすめします。
手術後の不具合を少しでも抑えるための注意点
症状が将来にわたって残ってしまう後遺症とは異なり、ダウンタイム中に生じる不具合は、手術後の生活に注意することである程度は抑えることが可能です。
必ず生じるといっても過言ではない腫れに対しては、手術後にしっかりと冷やすことで備えます。ポイントは腫れが生じる前に冷やすことです。このとき、まぶたに強い力が加わらないように注意します。保冷剤を直に当てるのではなく、やわらかい布やガーゼに包むとよいでしょう。手術の翌日以降も必要であれば冷やしても問題はありませんが、初期の腫れを抑えるためにケアする期間(2日程度)を過ぎると、今度は冷却によって血流が滞り、回復が遅くなってしまう可能性がありますので、初期の腫れを抑える事ができたら冷却は終了した方がよいでしょう。
また、血行をよくする行動は控えます。手術当日の入浴は出血のリスクがあるため厳禁です。数日は熱いお湯に入ったりかけたりすることも避けるべきでしょう。洗顔は水かぬるま湯で行います。まぶたが腫れている間は運動や力仕事も控えた方が無難です。
手術したところが気になるかもしれませんが、むやみに触ることは避けましょう。
眼瞼下垂の手術後は経過観察が重要
眼瞼下垂の手術は特別なものではありません。しかし、手術後の状態は人それぞれです。一般的にこうだからといって、すべての人に当てはまるわけではないことは、後遺症についてもいえます。眼瞼下垂の手術後は注意点を守りながらしっかりと経過観察をすることが重要です。少しでもおかしいと感じたら、医師の診察を受けましょう。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹