コラム
COLUMN垂れ乳(たれ乳)の改善は可能?垂れ乳になる原因と対策法について
バストのお悩みには様々なものがありますが、年齢を重ねるとともに表れやすく、最も多くの方が経験するものが乳房下垂いわゆる「垂れ乳」ではないでしょうか。
垂れ乳の対策は日々のケアがとても大切です。今回は、垂れ乳に悩まされないために日常で気を付けるべきポイントや、改善するためのケア方法、そして美容整形で行う事が出来る治療方法などについて詳しく解説いたします。
垂れ乳とは?
垂れ乳は簡単にいえばバストが加齢などの要因によって下方に垂れた状態で、乳房下垂の状態を指します。
垂れ乳という名称ではありますが、一般的には乳房の下垂状態というよりも、バストトップ(乳輪)の位置が下がっているかどうかで判断され、若くバストにハリがあっても形状の兼ね合いで垂れ乳と見られる事があります。
乳房下垂の基準としては「Regnault分類」というものがあり、乳頭(乳首)の位置が乳房の下溝(バストとアンダーバストの境目)より下にあると下垂状態と判断され、下溝より1㎝以内ならⅠ度(軽度)、1~3㎝以内ならⅡ度(中程度)、それ以上ならⅢ度(重度)というような分類がされています。
また、こうした分類によらずに見た目が「垂れて見える」状態も垂れ乳とされます。
バストの理想的な形としては鎖骨の間の窪みと左右のバストトップを結んだ線が正三角形になるような状態といわれていますが、バストトップの位置が下方にある事で、この三角形が縦長の二等辺三角形になるようなケースでは垂れ乳としての印象が持たれる事となります。
垂れ乳になってしまう原因
「年をとってバストが垂れるのをケアしたい」と考える方が多いように、垂れ乳の大きな要因としては加齢による体質変化があります。
しかし一方で、加齢だけが原因というものではなく生活習慣など様々な要因によって垂れ乳の状態が進行する事となりますので、原因を正しく知ってケアを行う事が垂れ乳の対策には大切です。
垂れ乳の具体的な原因としては「クーパー靱帯による支えの弱体化」「皮膚のたるみ」「筋肉の衰え」の3つが挙げられます。
クーパー靱帯の支えの弱体化
クーパー靱帯とは、乳腺と皮膚や筋肉を繋ぐコラーゲン組織の事で、バスト内に多数存在しています。
ハリのあるバストでは、このクーパー靱帯が乳腺をしっかりと支えているためバストが垂れる事無くいられるのですが、バストが激しく動かされたり強くマッサージされたりするとクーパー靱帯がダメージを負って伸びてしまったり、切れてしまったりして乳腺が支えられなくなり、ハリが失われて垂れた状態になります。
またクーパー靱帯はコラーゲンで出来ているため、加齢によって体内のコラーゲン量などが減少していくとクーパー靱帯も弱体化していきます。
皮膚のたるみ
バストは脂肪と乳腺を皮膚が包み込む形で作られています。
健康的な皮膚はコラーゲンやエラスチンといった弾力を作る成分も多く、ピンとハリのある状態が保たれていますが、加齢や紫外線ダメージなどによって皮膚内の弾力成分が減少すると、弾力の無いたるんだ状態となってしまいます。
皮膚の弾力が失われると皮膚が伸びやすい状態となりますので、乳房内部の脂肪や乳腺の重さによって垂れる原因となります。
筋肉の衰え
バストは大胸筋が土台として支えており、大胸筋がついている方は特にバスト上部がしっかりと支えられます。
一方で大胸筋が衰えて弱くなると、バストの重量をしっかりと支えられなくなってしまい、下垂しやすくなります。
また、大胸筋が細いと土台が薄くなるため、デコルテ周辺が貧相になりやすいといえます。
垂れ乳を防止するためには3つの原因を防ぐ事が大切
以上のように、垂れ乳は「クーパー靱帯」「皮膚」「筋肉」の3つが衰えたり弱体化する事で引き起こされるものですので、これを防ぐ事が予防のポイントとなります。
具体的には、下記のような点に注意する事が大切です。
バストを激しく揺らさない・動かさない
クーパー靱帯はバストを大きく動かしたりすると伸びたり切れたりしてしまいやすいものですので、とにかく激しく揺らしたり動かしたりしないように気を付ける事が重要です。
成長に伴ってバストがある程度の膨らみとなってきたら、運動などでの揺れを防ぐためにもしっかりとバストサイズに適した下着を着用するようにしましょう。
寝るときにはナイトブラを利用する
睡眠時は、姿勢によっては直接バストが圧迫されたりする事もあり、意外と無意識にバストが大きく動かされやすいタイミングですので、ナイトブラの利用などでしっかりと保護をするようにしましょう。
強くマッサージをしたりしない
バストのケア目的のマッサージなどで強く揉んでしまうと、これもクーパー靱帯に負担をかける可能性があります。
ケアを行う際のマッサージなどを行う場合は、強く揉んだりせずに優しく行うようにしましょう。
紫外線対策や保湿ケアをしっかり行う
皮膚のタルミ、肌老化を引き起こす最大の要因は紫外線と言われています。
特に夏など薄着になる時期は、日焼け止めをしっかりデコルテやバスト周囲にも塗ってケアするなど充分な紫外線対策をするように心がけましょう。
また、肌は充分な潤いによって高いバリア機能を発揮します。化粧水やクリームなどによる保湿ケアについても、顔だけではなくバストまで含めてケアを行うと良いでしょう。
姿勢の悪さによるコリなどに気を付ける
肩や背中などのコリは、バスト周囲の血流を悪化させてしまいます。
筋肉や皮膚は血液から栄養を受け取って代謝しているため、血流が悪化する事はバストを支える組織の健康を損ない、弱体化させる大きな要因となります。
スマホやパソコンなどを使用する際に猫背となっていたり、首を前に突き出したような姿勢となっていたりすると首や肩回りの筋肉に負担をかけてコリやすくなるように、悪い姿勢は悪影響となりますので注意しましょう。
バランスの良い食事を心がける
皮膚や筋肉を健康的な状態に保つためには、代謝に必要な栄養素をバランスよく摂り入れる必要があります。
特にタンパク質は細胞を作るための重要な栄養素ですので、しっかりと食事で摂取するようにしましょう。
もちろん、タンパク質だけを摂ればいいというものではなく、他の三大栄養素である糖質や脂質、ビタミンやミネラルといった栄養についても満遍なく摂取する事が大切です。
垂れ乳を改善するセルフケア
垂れ乳を改善するためのケア方法としては、トレーニングやマッサージによるセルフケアと美容整形による方法があります。
セルフケアで効果が期待できるものとしては下記の通りです。
大胸筋のトレーニング
バストを支える大胸筋はトレーニングで鍛える事が可能で、大胸筋を鍛える事によってバストの上部にハリが得られ、垂れ乳も改善されます。
大胸筋のトレーニングとして最もポピュラーな方法は腕立て伏せ(プッシュアップ)ですが、腕立て伏せはある程度腕の筋力も必要となる他、正しい姿勢でのトレーニングが難しいものですので、まずは床ではなく壁に手をついて行う「ウォールプッシュアップ」や、手のひらを胸の前で押し合わせる事で行うようなトレーニングから始めると良いでしょう。
ウォールプッシュアップ
- 壁に向かって足を揃えて立ちます
- 腕をしっかりと伸ばした状態で、胸の前あたりで壁に手のひらをつけます
- そのまま腕立て伏せをするようなイメージで、足の位置は変えずに腕を曲げながら、ゆっくりと壁に顔を近づけます
- 壁に顔がつくギリギリくらいまで下げたら、腕をゆっくりと伸ばして元の姿勢に戻ります
1~4を10回程度、1日に3セットほど繰り返しましょう。
トレーニングの際、胸の筋肉が使われている事を意識したり、1回の動きを10秒程度かけて行うなどゆっくりとトレーニングを行うと効果的です。
手のひらの押し合いトレーニング
- まっすぐに立ちます(座っていてもOK)
- 両方の手のひらを、胸の前で合せます(合掌の状態)
- 手のひら同士で押し合うように10秒程度力をいれます
1~3を行って5秒程度休憩するという動作を、10回ほど、これも1日3セット程度行います。
手のひらを合せる際、高さは胸の前で、少し胸から離した位置にすると大胸筋に力が入りやすくなります。
また、力を入れる際はゆっくりと口から息を吐きながら行うようにするとトレーニング効果が得やすくなります。
マッサージによるバストケア
マッサージによるケアは、主にバスト周囲の血流促進などを目的としたものです。
また、バスト周辺の筋肉の緊張(コリ)はバストを引っ張ってサイズを縮小させたりする要因にもなりますので、マッサージによる血流改善でコリをほぐす事で、本来のバスト位置へと戻す効果も期待できます。
マッサージの方法としては、バストの上部にある鎖骨周辺を中心から外側に向かってなでるようにマッサージする方法や、バストの下側からバストを掬い上げるようにマッサージする方法などがあります。
背中や肩回りのコリをほぐす事も大切なポイントとなりますので、適度に肩のマッサージなども行うと良いでしょう。
もみほぐすのではなく、ゆっくりとストレッチで伸ばす事なども効果的です。
マッサージを行う際は、摩擦刺激があるとかえって肌老化などの原因となりますので、マッサージ用のクリームなどを使って滑りを良くした状態で行いましょう。
また、強くもみほぐすとクーパー靱帯のダメージとなりますので、あくまでも優しくなでる程度の力で行うようにしましょう。
垂れ乳を改善する美容整形
バストの下垂はしっかりとケアを行っていたとしても、加齢によって多少なり進行していくものです。
下垂が進行した場合はセルフケアでの対策では充分な効果を得る事が難しくなりますので、美容整形などもとりいれる事を検討してみてはいかがでしょうか。
乳房固定術
乳房固定術は垂れ乳(乳房下垂)を解消するための整形術です。
治療方法としては、乳頭の周囲や乳房下部を切開し、乳頭の位置を持ち上げながら縫いとめて固定する事で行います。
下垂の程度によって術式が変わり、軽度の下垂であれば乳頭周辺だけを切開して乳頭周辺のみを縫い縮める形の「Round法」。
中程度の下垂がある場合には、乳頭の周囲から下方向に向かって切開を行い、余分な乳房組織を除去しながら乳房の下方向に線が出来るような形で縫いとめる「Vertical法」。
更に重度の下垂には、乳頭周囲と乳房下部を全体的に切開して、乳房下部の溝に沿うような形の逆Tの字で縫いとめる「Anchor法」といったものが用いられます。
乳頭の位置を持ち上げ、たるみが目立つ乳房をハリのある状態に戻す事が出来るため、バストの見た目を大幅に若返らせる事ができます。
豊胸術
豊胸術の行い方によっては、垂れ乳も改善させる事ができます。
垂れ乳はバストのボリュームが少ない事も要因となりますので、豊胸術によってボリュームを持たせる事でハリのあるピンと上向いたバストを手に入れる事が可能です。
豊胸術には様々な術式があり、主流となっているものは下記の方法です。
人工乳腺法(インプラントバッグ)
シリコンなどで出来たバッグをバストの内部に挿入してボリュームを持たせる術式です。
バッグには様々な種類があり、近年は非常に柔らかく自然な仕上がりで、拘縮のリスクも少ないMotivaなどが多く利用されています。
挿入するバッグのサイズなどによって仕上がりのデザインがコントロールしやすく、誰でも理想とするバストを手に入れやすいのがメリットで、特に細身の方や大幅なサイズアップをしたい方などに適しています。
脂肪注入法
お腹などから脂肪吸引によって脂肪を採取し、その脂肪を再度バスト内に注入する事でボリュームアップさせる術式です。
注入された脂肪は再度毛細血管と接続する事で活きた細胞となり、バスト内に残り続けて永続的なバストアップ効果が得られます。
自分の脂肪を使用しているため安全性が高く、触った時の感触なども自然である事や、お腹周りの痩身なども同時に叶えられる点が大きな利点となる術式です。
一方で、注入した脂肪細胞は全てが定着するわけではなく、大体5~8割程度が定着し、残りは異物として体内に吸収されて排出されるか、場合によってはしこりなどとして残ってしまう事があるため、ボリュームの完全なコントロールが難しい点などがデメリットとして挙げられます。
定着率を上げるための方法として、採取した脂肪を特殊なフィルターにかけて精製する「ピュアグラフト」や、遠心分離機にかけて選別する「CRF(コンデンスリッチファット)」などがあります。
ヒアルロン酸注入
大量の水分を抱え込む性質を持ち、人の体内でも合成されている事から安全性の高いヒアルロン酸を使ったジェル状の製剤を注射でバスト内に注入する術式です。
脂肪注入と同じような原理でバストのボリュームを増やす事が可能で、脂肪を採取する必要が無いためダウンタイムなどの心配が不要で手軽に行える点が大きなメリットとなっています。
一方で、ヒアルロン酸は体内に入ると徐々に分解されていくため、注入による効果は永続的ではなく大体1年から2年程度で吸収されて元の状態に戻ります。
手軽で安全な一方で、効果を持続させるためには繰り返しの治療が必要になる点がデメリットです。
垂れ乳対策は日ごろのケアによる防止が重要
垂れ乳はクーパー靱帯や皮膚、筋肉といった組織の弱体化によって生じるお悩みですが、こうした組織は一度ダメージを受けてから元の状態に回復させる事が非常に難しいものです。
特にクーパー靱帯は一度切れてしまうと新しく作られたり元の状態に回復するものではありませんので、垂れ乳を対策するためには、とにかく日ごろのケアによってダメージを防止し、垂れ乳を予防するという事が重要となります。
それでも加齢による代謝の低下などは誰でも等しく起こるものであり、理想の状態を維持し続ける事は難しいというのが実情ではありますので、お悩みの方は美容整形による解消などもご検討してみてはいかがでしょうか。
早めにケアをする事で、より状態が悪化するのを防ぐ事も可能となりますし、悩みが解消される事で日々をより明るく過ごせる事は人生に大きなプラスをもたらします。
垂れ乳の原因や最適な解消方法は人それぞれ異なりますので、専門医の診断でしっかりと状態を把握して適切なケア方法を知るだけでも、お悩みの解消に向ける事ができます。
城本クリニックでは専門の医師がしっかりと時間をとって診察およびカウンセリングを行っておりますので、自身に適した治療法やケア方法が知りたいという方は、是非一度お気軽にご相談ください。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹