コラム
COLUMN子供がワキガの場合は治療できる? 症状はいつ頃から出るのかなどについて詳しく解説します
ワキガ体質による体臭の悩みは非常にセンシティブなものですが、多感な思春期頃であればなおさら大きな悩みとなりやすく、どのようにケアをするべきなのか、根本的な治療は可能なのかなどが気になる事かと思います。
今回は子供のワキガが何歳頃に気になりだすのかや、どのようにケアするべきなのか、また治療は可能なのかなどについて詳しく解説いたします。
ワキガのニオイが出るのは思春期頃から
ワキガは主に思春期頃にニオイが気になりだす事が一般的で、これはワキガの原因が性ホルモンの刺激によって発達し、汗の分泌が促進される「アポクリン汗腺」という汗腺によるものだからです。
ワキガの原因であるアポクリン汗腺とは
アポクリン汗腺は耳やわき、乳輪や外陰部、そして肛門周囲に集中して存在している汗腺です。
汗というと暑いときや運動した時にかく水っぽい汗をイメージしやすいかと思いますが、この汗は唇など一部を除いた全身に存在するエクリン汗腺という部分から分泌されているもの。
アポクリン汗腺からの汗は脂質やタンパク質などが多く、エクリン汗腺からの汗のように水分が多くサラサラとした汗ではありません。
アポクリン汗腺が何のためにあるのかというと、元々はフェロモンを分泌するためと考えられており、アポクリン汗腺からの汗は性ホルモンの刺激によって分泌が促進されます。
なお、人間はアポクリン汗腺から分泌されるフェロモンを受け取る機能が退化しているため、アポクリン汗腺からの分泌物がフェロモンとして働く事はないとされています。
アポクリン汗腺の発達や汗の分泌には性ホルモンが強くかかわっているため、第二次性徴を迎えるまでの子供はワキガの症状が出る事はありません。
第二次性徴を迎える時期は人によっても異なりますが、大体11歳から15歳の間の男女で体つきの違いが表れてくる思春期の時期にワキガの症状が出てくる形となります。
アポクリン汗腺からの汗が菌によって分解されるとニオイの原因になる
アポクリン汗腺から汗が分泌されても、実はその状態ですぐにワキガの強い体臭となるわけではありません。
ワキガのニオイは汗に含まれている脂質やタンパク質が、ワキにいる常在菌に分解される事で強いニオイの成分に変化する事で生じます。
そのため、市販のデオドラント商品は主にワキの殺菌を行う事などでニオイの原因となる成分が作られるのを防ぐなどによって効果を発揮しています。
ただし、強い殺菌効果はニオイの原因となる菌だけではなく皮膚の保護に必要な菌も除去してしまう場合があり、デオドラント商品を使いすぎるとかえって体臭が強くなってしまう事もありえます。
ワキガになるかどうかは遺伝的な違いが大きい
ワキガの原因は主にアポクリン汗腺からの汗によるものですが、アポクリン汗腺が発達しやすいかどうかは遺伝的な要素に左右されます。
日本人を含む東アジア地域に在住のモンゴロイド系人種はアポクリン汗腺が発達しにくい遺伝子を持っている割合が多いため、第二次性徴をむかえてもアポクリン汗腺が発達せず、わきがにならない方が大多数です。
一方で欧米系やアフリカ系の人種ではアポクリン汗腺が発達しやすい方が大多数であるため、ワキガ体質になる事が一般的で、日本と比べてあまりワキガの体臭が気にされないようになっています。
なおワキガ体質の遺伝は優性遺伝のため、親から子に受け継がれる可能性が高いという性質があります。
両親のどちらかがワキガである場合は少なくとも50%、どちらもがワキガである場合は75%以上で子供が遺伝的にワキガ体質を受け継ぐものとなります。
子供がワキガかどうかのチェック方法
子供がワキガ体質かどうかについては、下記の項目に当てはまる項目が多いかどうかでチェックを行う事ができます。
ワキガの体臭は生活環境を共にしていると気が付きにくい事もありますので、ニオイだけでは判断が難しい場合の目安として確認してみてください。
ただし、これらは大半がアポクリン汗腺が発達してきてからの特徴であるため、幼児の頃など思春期を迎える前にチェックを行えるわけではありません。
アポクリン汗腺が発達する前にワキガの可能性を判断する方法としては親がワキガ体質であるかどうかという点になり、両親のどちらもワキガの特徴が全くなければ子供がワキガ体質になる事は無く、ワキガの特徴を持っていれば50%以上の確立で受け継がれるというように考えると良いでしょう。
ワキガ体質の判断チェックリスト
- 耳垢が湿っている(カサカサしていない)
- ワキの毛が濃い
- 衣服のワキ部分が黄色くなりやすい
- ストレスで汗をかきやすい
ワキガの対策として行うセルフケア
子供がワキガ体質である場合、まずはセルフケアでにおいの原因を予防する対策が行えます。
対策方法や対策の注意点をご紹介します。
制汗剤やデオドラント商品を適切に使う
ワキガのニオイ対策としては、やはり制汗剤やデオドラント商品を適切に使用する事が有効です。
汗を抑える事でニオイの原因や汗の蒸発によってニオイが拡散しやすい状態を予防し、デオドラント商品で菌の繁殖を防ぐ事でニオイの原因が作られる状態を予防します。
ただし、前述の通りデオドラント商品を使いすぎると皮膚を保護するために必要な常在菌も殺菌してしまい、ニオイの原因である菌がよけいに繁殖しやすくなってしまうなどの可能性もありますので、使い過ぎには注意しましょう。
また、学校などでは小まめに制汗剤やデオドラント商品を使うという事が難しい場合もありますので、その場合はパースピレックスなど医療用の制汗剤使用をおススメします。
医療用の制汗剤は使用すると汗腺を元から塞ぐなどで効果を発揮し、効果が数日間持続するようなものもありますので、小まめにケアを行う事が難しい子供の汗対策として使いやすいものとなっています。
ワキの毛を適切に処理する
脇の毛が伸びていると、汗がそこに溜まって蒸れやすくなるため、菌が繁殖しやすい環境となります。
そのため、ワキガのニオイを抑えるためにはワキの毛を処理しておいた方が良いのですが、ムダ毛処理についても剃毛などで肌を傷つけてしまうと皮膚の抵抗力が弱くなり、雑菌が繁殖しやすい環境になるといった可能性があるため注意が必要です。
なるべく肌を傷つけないよう、肌への負担が少ない電気シェーバーなどを使用し、頻度も毎日ではなく1日置き程度にするとよいでしょう。
衣服もしっかりと洗濯や殺菌をする
ワキガ体質で衣服のワキ部分が黄色く変色しやすいのは、汗に含まれるタンパク質成分などによるものです。
この状態の衣服を着続けると、衣服についたタンパク質などでも菌が繁殖するためニオイが強くなりやすくなってしまいます。
タンパク質汚れを落とすような洗濯をしっかり行って、ニオイの原因を減らしましょう。
また衣服の生乾き臭を発生させる菌は通常の洗濯だけでは殺菌しきれず、ワキガのニオイと混ざってより強い体臭として感じやすくなる事もありますので、高温で殺菌を行うなども対策として取り入れると良いでしょう。
脂っこい食事は控えめに
アポクリン汗腺からの汗は、肉食や揚げ物などの脂っこい食事が多いと分泌されやすくなります。
成長期は特に汗の分泌量が多くなりやすいので、こうした食事はなるべく避けた方が体臭ケアとしては良いでしょう。
とはいえ、体を作るために沢山の栄養が必要であるこの時期に十分な食事を取れない事も良くないため、なるべくバランス良くしっかりと食べる事が大切です。
子供のワキガ治療について
ワキガの症状を根本から治療するためにはアポクリン汗腺の働きを抑える治療や、アポクリン汗腺を除去してしまう手術が有効です。
しかし、思春期頃はまだ体を作っている最中であるため、例えばアポクリン汗腺を手術によって除去したとしても、再度汗腺が作られてニオイが再発してしまうという可能性が考えられます。
また、手術による方法はどうしても術後しばらくの間、切開を行った箇所に傷跡が残ってしまうため、多感な時期に手術を行わない方が良いケースもあります。
手術によるケアを行うべきか、その他の治療で症状を抑えておいて将来的に手術も含めて検討するかなどは体臭の度合いや生活環境などによっても変わりますので、医師とよく相談して最適な治療方針を決めていくようにしましょう。
ワキガの具体的な治療法は下記のものがあります。
剪除法(手術による方法)
ワキガの症状を根本的に解消する方法で、アポクリン汗腺などを直接医師が目視確認しながら全て除去する手術です。
ワキを切開して裏返し、汗腺を一つ一つ目で確認して除去を行うため、ワキガの症状を根本から解決する方法としては最も信頼できます。
ただし、手術の後は1週間程度ワキを動かないように固定して過ごす必要があるなど、子供が治療を受ける場合には強いストレスがかかってしまう可能性もあります。
また、体が出来上がっていない子供の頃に手術を行うと、その後またアポクリン汗腺が発達して症状が再発するというケースも考えられますので、剪除法による治療が適しているかどうかは医師と良く相談して決めましょう。
ボトックス注射(ボツリヌストキシン注射)
神経の働きに作用し、汗腺の働きを止めるボツリヌストキシン由来の薬剤を使用した注射による治療法です。
汗腺の働きをストップさせることで、わきがの原因である汗の分泌を抑えます。
手術と違いカラダへの負担が少ないため、子供でも受けやすい治療といえるでしょう。
ただし、ボトックス注射の効果は数か月で無くなっていくため、治療効果を持続させるためには定期的な注射が必要となります。
医療用制汗剤
市販の制汗剤よりも強力かつ長時間効果が発揮される医療用の制汗剤を使用する事で、日中のこまめなケアを意識する事無くワキガの症状を抑える事ができます。
医療用の制汗剤にはいくつかの種類があり、その種類によって肌への負担なども変わりますので、まずは一度取り扱いのクリニックで相談しましょう。
子供のワキガ治療は長期的な視点で医師とよく相談しましょう
ワキガは多感な思春期に生じてくるものであり、強い悩みやストレスになりやすいものであるといえます。
子供でも治療する事は可能ですが、術後のケアが適切に行えるかどうかや傷跡の問題、そして再発の可能性など、大人が治療を受ける時とは異なる面も含めてどのように対策を行う事が最適であるかを考える必要がありますので、まずは信頼できる医師を見つけ、長期的な視点も含めて治療法をじっくりと相談しながら決めるとよいでしょう。
城本クリニックでは、ワキガ治療の経験が豊富な医師がお悩みをじっくりと伺い、長期的に最善の治療方をご提案させていただいております。
カウンセリングは無料となっておりますので、治療をご検討されている方は是非一度お気軽にご相談ください。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹