コラム
COLUMN糸リフトが施術後に馴染むまでの経過と効果を適切に維持させるためのポイント
シワやたるみといったエイジングサインの悩みは、多くの方が抱えるものです。
加齢によって引き起こされるこうした悩みの解決法として様々な美容整形やスキンケア治療がありますが、その中でも効果の高さや体への負担の少なさなどから人気となっている方法が糸リフト。
今回は、この糸リフトについて具体的にどのような効果が期待できる治療なのかや、治療後に糸が馴染むまでにどのような経過を辿るのか。そして治療効果を維持させるための注意点などを詳しく解説します。
糸リフト治療とは?
糸リフトとは、医療用の糸で皮膚を内側から持ち上げるようにする事で顔のリフトアップ効果を得る美容治療です。
糸で直接たるみを引き上げて解消を行う効果と、糸の周囲に作られる「コラーゲントンネル」による引き締め効果によって、即効性と持続性のあるリフトアップが可能である点が特徴です。
糸によって引き上げを行う即時性の効果
糸リフトにはいくつかの種類がありますが、主流となっているものはこめかみや頬の上部あたりから口角に向かって糸を挿入し、糸で直接皮膚を持ち上げて固定するというものです。
糸には「かえし」がついており、かえしが皮膚の内側に引っかかって持ち上げる事で、物理的に顔のたるみを改善する事ができます。
直接たるみを持ち上げるため、治療の直後からすぐに効果を実感する事ができます。
糸の周囲にできる「コラーゲントンネル」による引き締め効果
糸リフトでは、挿入した糸の周囲にコラーゲン組織が大量に作られます。
これは、体にとって「異物」である糸からの刺激を受ける事で皮下にある細胞が活発になるためで、糸の周囲に筒状に作られるためコラーゲントンネルなどと表現されます。
コラーゲンは肌のハリや弾力を保つ成分であり、コラーゲン組織が作られる事で引き締め効果やリフトアップ効果が期待できます。
コラーゲンは糸の挿入から徐々に作られ始め、2週間から1ヶ月程度かけて増えていく事から、治療後徐々に肌のハリがアップしていくイメージとなります。
糸リフトの効果は「永続的」ではない
糸リフトによるリフトアップ効果は、永続的ではありません。
なぜなら、糸リフトに用いられる「糸」は一定期間で体内に分解、吸収される素材で出来ており、大体1~2年ほどが効果の持続期間とされています。
何故体内に吸収されて無くなってしまう糸が用いられるかというと、これは治療の安全性を高めるためです。
治療後にずっと糸が残り続けてしまう場合、何らかの影響で体質が変化してアレルギーの原因となってしまったり、感染などが生じて化膿してしまうなどのトラブルが発生する可能性がある他、何か他のリフトアップ治療をする時に邪魔になってしまう可能性があるなど様々なリスクが生じる事となります。
一定期間で溶ける糸であればこうしたリスクが殆どなく、安心して治療を行いやすいのです。
また、溶けない糸を使用したとしても効果が永続的にはならないという面もあります。
肌のたるみは一度治療によって引き上げたとしても、長期的に見ればまた肌のたるみが進行しますし、糸の引き上げ効果が弱まる事などもあって、3年程度すれば効果は無くなります。
そのため、糸リフトも以前は「金」で出来た糸などが用いられる事がありましたが、糸が残り続ける手法は長期的に見ればリスクだけが残ってしまうという状況になりますので、現在はどのクリニックでも溶ける糸による治療が主流となっています。
糸リフトの種類(糸の材質)
糸リフトで利用される糸は、ものによって様々な材質がありそれぞれに特徴があります。
主に使用される糸の材質は下記のものです。
PDO
PDO(ポリデオキサノン)という材質の糸は、適度な引き上げ力と効果的な引き締め力を持つ事が特徴です。
体内に吸収されやすく持続期間が短いという点はあるものの、糸自体が摩擦によって肌に微弱な刺激を与え、コラーゲン組織を作り出しやすいという点から引き締め効果が高い点がメリットで、「強力にたるみを持ち上げたい」というよりは「自然な形で肌を引き締めていきたい」という要望に合っています。
PDOの糸として代表的なものは「テスリフトソフト」など。テスリフトソフトはメッシュ状に編まれた糸の形状によって、皮膚組織と馴染んで優しく持ち上げながら、高い引き締め効果を発揮する糸です。
PDOは比較的吸収スピードが早い方ですが、メッシュ状に太く編まれている事などの特徴もあるため、効果は2年ほど持続します。
PCL
PCL(ポリカプロラクトン)は柔軟性に優れている特徴と、吸収されるまでの時間が長いという特徴を持ちます。
糸が吸収されるまでの期間は2~3年程度のため、なるべく長い期間引き上げ効果を得られる糸の素材だといえます。
柔軟性があって柔らかい特徴から、口元や目元などの動きが多い箇所に使用する糸としても相性が良く、また糸による引き上げ効果も強いため、しっかりと持ち上げたい部位の使用に適しています。
この素材の糸は「ボブリフト」や「シャークリフティング」などが該当します。
注意点として、糸自体の持続力が長くても、挿入箇所を大きく動かしてしまうと糸がずれてリフトアップ効果が失われやすくなりますので、治療後の過ごし方などを含めて医師とよく相談するようにしましょう。
PLA
PLA(ポリ乳酸 : Polylactic Acid)は中程度の溶けやすさで、1年半~2年程度の持続期間がある糸の素材です。
様々な形状に加工が可能で、凸凹にしたりトゲをつけたりといった以外にも、ばねのような形状にする事で鼻先などの高さを出す糸として使用するなど特徴的な使われ方も多いです。
色々な形状で利用できる事から引き上げの力も非常に強い糸が多いといえます。
PLAはアメリカの厚生労働省にあたるFDAの認可も受けている素材であり、高い安全性が担保された糸であるといえます。
PLAの糸では「ミントリフト」などがあります。
糸リフトが馴染むまでの経過
糸リフトは、施術を行った後しばらくの間は違和感や軽度の痛みが生じる事ががりますが、徐々に肌に馴染んでいく事で違和感が解消され、効果も高まっていきます。
施術後の経過は、体質や使用した糸の種類などによっても異なりますが下記のような流れとなります。
治療直後
糸リフトは治療の直後から「引きあがった」状態を実感できる治療ですが、施術の際には麻酔液で痛覚を麻痺させながら糸の挿入を行うため、治療直後は麻酔で腫れた状態となっています。
麻酔液による腫れは翌日には解消されるため、治療直後の引きあがりを実感しやすいのはその後となるでしょう。
麻酔は治療の後しばらくすると効果が無くなるため、治療部位に筋肉痛のようなズキズキした痛みを感じる方が多いです。
痛み止めを服用する事である程度軽減する事は可能ですが、少し重いような痛みの感覚は残る場合が多いといえます。
また、治療直後は麻酔の影響で顔が動かしにくくなり、麻酔が切れた後も糸が入っている事によって動かしにくいと感じると思います。
治療直後はまだ糸が肌にも馴染んでおらず、あまり大きく動かしてしまうと糸がズレる可能性も高くなりますので、なるべく表情を動かさないように過ごしましょう。
治療の翌日
麻酔が抜ける事で顔の腫れも軽減され、糸リフト直後のリフトアップ効果を実感しやすいタイミングです。
強めに引き上げを行っている場合、強く引きあがり過ぎのいわゆる「ひきつれ」状態になっていると感じるかもしれません。
糸リフトの引き上げ効果は、必ず治療直後の状態からすぐに落ち着いていきますので、このタイミングで「引きあがりすぎている」と強く心配する必要はありません。
糸が入っている箇所に軽度の痛みや違和感がありますが、痛み止めの服用などで軽減しつつ、引き続き表情を大きく動かさないよう安静に過ごしましょう。
治療後1週間程度
治療後1週間程度が経過すると、糸が肌に馴染んできます。
強いひきつれ感などがあった場合も、この頃には落ち着いてくるでしょう。
肌に糸が馴染んでくるまでに表情を大きく動かしてしまうと糸がズレてリフトアップ効果が減少してしまう可能性があるので、1週間が経過する頃まではなるべく表情を動かさないようにして過ごすようにしましょう。食事の際も、なるべく口を大きく開けたりしないで行うように注意が必要です。
糸リフトでは副作用として内出血や腫れ、むくみといった症状が発生する事もありますが、こうしたリスクも治療後1週間が経過する頃には落ち着いてきます。
尚、内出血や腫れといった状態は血流が増加すると悪化してしまうリスクが高まるので、治療後1週間は血流を促進する行為(入浴、サウナ、激しい運動、アルコール摂取など)は避けるようにしましょう。
治療後2週間~1ヶ月
治療後2週間から1ヶ月程度が経過する頃に、コラーゲンの増生による引き締め効果が実感できるようになってきます。
糸の周囲にコラーゲントンネルが出来てくる事によって、施術直後よりも肌にハリがあって引き締まった状態が作られていきます。
また、この頃には糸が挿入されている事による違和感も殆どなくなってくるでしょう。
違和感も無くなり、肌の調子がどんどん良くなってくるこのタイミングで「糸が肌に馴染んだ」と感じてきやすいのではないでしょうか。
糸リフトの効果を適切に維持させるポイント
糸リフトの効果をしっかりと発揮するためのポイントは「治療後すぐは大きく表情を動かさない事」「糸の挿入箇所に負担をかけない事」の2点です。
前述の通り、治療後すぐは挿入した糸がまだ皮膚と馴染んでいないため、大きく口をあけるなど表情を動かしてしまうと糸の挿入位置がズレて、十分にリフトアップ効果が発揮されなくなってしまう可能性があります。
治療後1週間程度はズレるリスクも大きいので、意識して表情の動きを小さく抑えるようにしましょう。
また、糸が馴染んだ後も強いフェイシャルマッサージやゴシゴシと擦るような洗顔は避けるようにしましょう。
強い圧が加わってしまうと糸が切れてしまってリフトアップ効果が減少してしまう可能性が高まりますし、そうでなくても強い皮膚への刺激は肌への負担となりたるみを進行させてしまう要因となりますので、極力さけるようにした方がよいでしょう。
その他、治療の際には効果を長持ちさせるための注意点などが医師から行われますので、しっかりと指示を守ってケアを行うようにしましょう。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹