コラム
COLUMNワキガで急に脇が臭くなったり、逆に急に治ったりする事はある?
ワキからツンとした強い体臭が出てくる症状のワキガ(腋臭症)ですが、ある時までは特に気にならなかったのに、一時を境に急に脇が臭くなったと感じるようなケースから、自分がワキガになったのでは? と考える方もいらっしゃいます。
また、その逆である時からニオイが気にならなくなり、急に治ったというケースもありますが、実際にワキガ体質が急激に発生したり、治ったりする事があるのかについて詳しく解説します。
ワキガは「急になる」ことも「急に治る」事も基本的にはありません
まず結論からいえば、ある日突然にワキガ体質になるという事も、その逆で急に治ったりする事も基本的にはありません。
ではなぜこのように感じるケースがあるのかというと、下記のようなパターンが考えられます。
急に脇が臭くなったと感じるケース
脇が急に臭くなって「ワキガになった」と感じるようなケースは以下の通りです。
思春期になってアポクリン汗腺が発達した
ワキガ体質は遺伝的な要素が強いため、生まれつきワキガ体質の素養を持っているかどうかが決まるものですが、実際に強い体臭としてあらわれてくるのは思春期以降の時期です。
その理由として、ワキガの原因であるタンパク質や脂質の多く含まれた汗を分泌するアポクリン汗腺は、性ホルモンの影響で発達して活発に汗の分泌を行うようになるため、思春期に訪れる「第二次性徴」で性ホルモンの分泌が行われるようになるまではワキガの症状が発生しないためです。
また、思春期は周囲から見た自分の姿が特に気になりやすい時期でもあるため、一度体臭を感じ始めると「周囲から臭いと思われる」といった不安が強くなりやすく、症状を重く捉えてしまいやすい傾向もあります。
更にいえば、思春期は元々体臭がそこまでない人であっても体臭を気にして制汗剤やデオドラント商品を多用するような場合がある時期であり、人の体臭に対して過敏に反応しやすい時期でもある事から、それまで気にしていなかった自分の体臭を自覚しやすいという側面もあります。
このように、思春期頃から発生しやすいというワキガの特徴と思春期特有の精神状態が重なって、「脇が急に臭くなった」と強く感じるケースがあります。
他人から指摘されて気が付いた
ニオイは一定時間嗅いでいると慣れてしまうため、自分の体臭というのは中々気が付かないものです。
自分自身の体臭だけではなく、家族など生活を共にしているような距離の近い人物についても、中々体臭の変化は気が付きにくかったりします。
そのような状況の中で、ある日他者から体臭を指摘される事によって「今まで問題が無かったのに、急に体臭が強くなったのかも」と考えるケースが2つ目です。
一度他者から体臭を指摘されて気にし始めると、その不安からどんどん体臭が強くなっていくように感じてしまう事もあり、指摘を受けたタイミングあたりから「急にワキガになったのでは?」と考えやすいといえます。
強いストレスなどによりワキガの体臭が強くなった
ワキガの原因であるアポクリン汗腺からの汗は、ストレスを感じると分泌が促進されます。
そのため、通常であればそこまでアポクリン汗腺からの汗が多くないため臭いが気になるほどまでならなかったという方でも、生活習慣の変化などでストレスが蓄積される事でニオイが強化されてしまう場合があります。
この場合も、一度自分自身の体臭が強くなったと感じると、それが更なるストレスとなって余計に体臭が強くなってしまうというマイナスの連鎖も重なり、急に脇が臭くなったと考えるケースとなります。
過剰なケアなどで常在菌のバランスが崩れた
ワキガはアポクリン汗腺からの汗が原因となりますが、汗そのものがニオイを発しているのではなく、汗が皮膚の常在菌によって分解される事で強いニオイの元となる成分が作り出されます。
皮膚には様々な常在菌が生息していて、体調などによってそのバランスが変化するものですが、デオドラント商品の使用などによっても常在菌のバランスが崩れる事があります。
常在菌の中には肌の状態を整えてむしろ体にとって良くない菌の繁殖を防いでくれるような善玉菌と言えるような菌も沢山あるのですが、こうした菌が除菌によって無くなってしまい、ニオイを作り出す菌が繁殖しやすい状態に陥るなどすると、ワキガのニオイが強く発生しやすくなってしまう可能性も考えられます。
更年期でホルモンバランスが変化した
ワキガの原因であるアポクリン汗腺は性ホルモンの刺激によって活発になるため、殆どの場合加齢により性ホルモンの分泌が少なくなると自然とワキガのニオイも軽減していきます。
思春期から20代前半頃が最も強いニオイとなりやすく、それ以降は徐々に軽減していくのですが、女性の場合は40代に入ると更年期によってホルモンバランスが崩れるため、これによってアポクリン汗腺が活発になるケースがあります。
それまで特にワキガの体臭が気にならなかったような方が、いきなり強い体臭を感じるようになる事で「突然ワキガになった」と感じるパターンの一つです。
急にワキガが治ったと感じるケース
一方の「急に治った」と感じるパターンは以下のようなものが考えられます。
食事の変化などで体臭が和らいだ
ワキガはアポクリン汗腺からの汗が多いかどうかという遺伝要素が強いものですが、それはあくまでも体質的な要因であり、実際にニオイの元となる汗が分泌されるかどうかは日々の生活習慣にも大きく影響を受けます。
特に影響を受けやすいのが食生活で、肉食が中心であったり、揚げ物などの脂っこい食事を多くとるような状態だと、ワキガの原因菌を増殖させるような汗が沢山分泌されやすくなるため、体臭が強くなりやすいです。
逆に言えばこうした食事を避けて、脂質などの少ないあっさりとした食事が中心になるとニオイの原因が作られにくくなりますので、ワキガが改善したと感じるようになります。
若いころは脂っこい物が好物だったという方も、年を重ねて好きな食べ物が変化し、さっぱりとした食事が中心になるなどの変化を迎える事で体臭も和らぐため、気が付いたら脇のニオイが気にならないようになって「急に治った」と感じるケースが考えられます。
妊娠や出産後の変化
ワキガに限ったことではありませんが、女性の場合は妊娠や出産のタイミングでは大きく体の状態が変化します。
その一つが体臭で、ホルモンバランスの変化によって汗腺が活発になり、ワキガの体質が強く出てくるという場合もあります。
しかし、こうした変化は出産や授乳が終わるとホルモンバランスと共に落ち着いていくため、ある時気が付いたら「急に治った」と感じるケースに該当するといえます。
ワキガ体質かどうかのチェック方法
以上のように、基本的には「ある日突然ワキガ体質になる」という事はないのですが、そもそもワキガ体質の方がホルモンバランスの変化などによってある時から体臭が強くなったり、逆に和らいだりするというケースはあります。
元々遺伝的にワキガ体質である場合はこうした変化が起こる可能性があるため、まずは自分自身に体質的な要因があるのかどうかをチェックしてみると良いでしょう。
ワキガ体質のチェック方法をご紹介します。
耳垢が湿っている
ワキガ体質のチェック方法として最もよく紹介されるものが、耳垢が湿っているかどうかというものです。
ワキガの原因であるアポクリン汗腺は体の中の限られた部位にしか存在しておらず、その一つが外耳道という耳穴部分で、外耳道にあるアポクリン汗腺は耳垢腺とも呼ばれます。
耳垢はこの耳垢腺から分泌される分泌物と角質がはがれたものや外部から侵入したホコリなどが混ざって作られますが、アポクリン汗腺が発達した「ワキガ体質」の方は、耳垢腺からの分泌液が多くなるため湿ってねばねばしたような耳垢となります。
一方でアポクリン汗腺が発達していない人は常に耳垢が乾燥したような状態ですので、これが一つの目安となります。
ただし、お風呂から出た後や耳の中が傷ついている状態などでは誰でも耳垢が湿った状態となる可能性がありますので、そういった状況では無い時にチェックをすると良いでしょう。
両親のどちらかがワキガ体質である
ワキガ体質は遺伝的な要因であるため、両親のどちらかがワキガ体質だと子供もワキガ体質の可能性が出てきます。
また、ワキガになる遺伝は優性遺伝といって体質に影響しやすい遺伝要素ですので、両親のどちらか片方がワキガの場合は少なくとも50%以上の確立、ワキガ体質の親側の祖父母が両方ともワキガ体質の場合は、75%程度の確立で遺伝すると考えられます。
逆に言えば、両親がどちらともワキガの遺伝的要素を持っていなければ子供がワキガ体質になる事はありません。
衣服の脇部分に黄色いシミが出来る
衣服の黄ばんだシミは主にタンパク質などが付着する事によって出来るものですが、脇部分が黄色くなるという場合はアポクリン汗腺から分泌された汗がその原因である可能性が高いといえます。
アポクリン汗腺からの汗が多いという事はワキガ体質の可能性が高いという事でもありますので、その時点ではあまり体臭を感じていなくても、常在菌のバランスなどによって体臭が強くなっていく可能性があるでしょう。
ワキガかな?と感じたら是非一度診察にお越しください
体臭の問題は本人にはなかなか正確に判断しにくく、場合によっては「自分が臭い」という思い込みによってニオイを感じる「自臭症」と呼ばれる状態になっている事もあります。
ワキガは突然なったり、治ったりするものではありませんが、医療的な措置を行えば原因をしっかりと取り除いて体臭を解決する事も可能です。
城本クリニックでは、わきがの治療に精通したドクターがそろっており、手術による根本的な治療や汗腺の働きを抑えて長期的ににおいの原因を抑える注射治療など、様々な解決方法をご用意しております。
まずはご自身の状態がどのようなものであるのかを正確に診断し、具体的なケア方法や治療方法を知るだけでもお悩みの解決に近づけるはずですので、ワキガかもしれないとお悩みの方は是非一度お気軽にご相談ください。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹