コラム
COLUMNワキガになりやすい人の特徴は? 何歳くらいから症状が出やすいのかなどを詳しく解説します
ワキから強いニオイがしてしまう症状である「ワキガ」ですが、ワキガになりやすい人はどういった特徴を持っているのでしょうか。
将来的にワキガの症状が出てくるか心配な方や、自分自身がワキガなのではと心配に感じている方など、この記事が対策のお役に立てば幸いです。
ワキガとはどのような症状か
ワキガは「腋臭症」という症状で、その文字の通り腋(わき)が臭いを発生させているという状態です。
「症」とついていますが何かしらの病気というわけではなく体質の一種であり、日本では割合が少ない(10%程度)一方で海外ではむしろワキガ体質の割合の方が高いため、そもそもワキガに悩むという事が無いようなケースもあります。
ワキガのニオイは「クミンのようなスパイシーな香り」や「硫黄のように鼻にツンとくるニオイ」など様々な表現がされますが、ニオイの種類や強さも体質によって人それぞれ異なっています。
ワキガの原因はアポクリン腺の汗
ワキガの直接的な原因はアポクリン腺という汗腺から分泌される汗です。
汗といっても水玉のような汗ではなく、タンパク質や脂質が豊富に含まれた汗で、この違いは汗が分泌される箇所によるものです。
水玉のような汗は99%が水分で、その他に少量の塩分や尿素などがふくまれているものですが、こちらはエクリン腺という汗腺から分泌されます。
エクリン腺は体中の殆どの部位に存在している汗腺で、例外として耳の中や爪の裏、唇などには存在しておらず、この部分で水分の多い汗をかくことはありません。
エクリン腺からの汗は体温調節などが主な目的となっているため、暑い場所にいたり運動したりして体温が上昇すると汗の分泌が促進されます。
一方でアポクリン腺というのは耳の中(外耳道)や脇、乳輪や外陰部のみに存在している汗腺で、毛穴に接続するような形で形成される汗腺です。
アポクリン腺からの汗は性ホルモンの影響で分泌が促進されるため、性ホルモンの分泌が始まる前の13歳頃まではアポクリン腺からは汗が分泌されません。
アポクリン腺の量や活性度は遺伝に左右される
ワキガの原因はアポクリン腺からの汗によるものですが、そもそもアポクリン腺が多いか少ないかや、活発に汗を分泌するかどうかは遺伝に影響されます。
遺伝的にアポクリン腺が少ないタイプであればワキガになる可能性は低く、日本人ではワキガが少ない一方で、欧米諸国やアフリカなどではワキガの率が高いのはこのためです。
ちなみに、ワキガ体質になる遺伝は優性遺伝であるため、どちらかというと体質として遺伝しやすいものになっています。
アポクリン腺からの汗が皮膚の常在菌によって分解されるとニオイの元に
アポクリン腺からの汗はそれ単体では強いニオイを発生させるものではありませんが、脇にいる常在菌によって分解が行われると強いニオイの原因となる物質が生成され、これがワキガのニオイの原因となります。
なお菌が原因というと「うつったりするのでは?」と疑問に感じるかもしれませんが、ワキガのニオイの原因となる菌はアポクリン腺からの汗が無いと生存し続ける事ができないため、そもそもワキガの体質では無い人がワキガの人からうつってワキガ体質となる事はありません。
ワキガはあくまでも体質であり、感染するというものではないのです。
ワキガになりやすい人とは
ワキガになりやすい人、ワキガ体質が発現しやすい人の特徴は下記のようなものが挙げられます。
両親のどちらか又は一方がワキガである
ワキガ体質は遺伝によるものなので、両親がワキガである場合はその遺伝を引き継いでワキガ体質となる可能性が高くなります。
また、ワキガ体質になる遺伝は優性遺伝であるため、例えば両親の片方から「ワキガになる遺伝子」もう片方から「ワキガにならない遺伝子」を受け継いだ場合は、ワキガになる遺伝子の方が体質として表れます。
そのため、両親のどちらかがワキガであれば、その体質を受け継ぐ可能性は少なくとも50%以上という事となります。
一方で両親のどちらもがワキガでは無い場合は、ワキガの遺伝が無いと考えられるため子どもがワキガ体質になる事はありません。
耳垢が湿っている
ワキガ体質かどうかを判断する方法として、耳垢が湿っているかどうかを見るというものがあります。
耳の中(外耳道)はアポクリン腺が存在していて「耳垢腺」とも呼ばれていますが、耳垢というのはこの耳垢腺から分泌された汗とはがれた耳の中の角質や外から侵入してきたホコリなどが混ざって出来るものとなっています。
また、耳の中には水分の多い汗を出すエクリン腺はありませんので、耳の中が汗で濡れるという事はありません。
そのため、耳垢が湿っているとアポクリン腺が多く活発に汗を分泌しやすい体質だという事が分かり、逆に耳垢が乾燥しているタイプの方はアポクリン腺が少ないため、ワキガ体質である可能性が低いという事になります。
ただし、お風呂から出た直後や耳の中が傷ついた状態などではアポクリン腺が少なくても耳垢が湿っている可能性はありますので、こうした状態を避けて確認してみると良いでしょう。
肉食や油の多い食事が中心の人
アポクリン腺から分泌される汗はタンパク質や脂質が多い汗であり、肉や脂っこい食事が多い人の方が分泌が盛んになりやすいです。
昔ながらの日本の食事では肉や油が少なかったためワキガの状態になりにくかったと言えますが、現代では欧米型の食生活となってきている事もあり、これがワキガの症状を引き起こしているという側面もあります。
肉や揚げ物などの油っこい食事、その他にはにんにくや香辛料などの強い刺激となる食事も体臭に影響を与えやすいため、ニオイを抑えたいという時には注意が必要です。
脇毛が濃い
アポクリン汗腺は毛穴に繋がった形で存在しているため、脇毛が多い人はアポクリン汗腺も多い可能性が高いといえます。
また、脇毛が濃いとそこに汗が絡まって留まりやすくなるため、蒸れて菌が増殖しやすい環境になりやすいという点にも注意が必要です。
なおエクリン腺からの汗であれば時間経過と共に水分が蒸発して汗をかいた形跡はなくなりますが、アポクリン腺からの汗については白い結晶などが残りやすいため、脇毛に白い粉などがつく方はワキガの可能性が高いといえます。
脇の部分に黄色いシミが着く
衣服に着く黄色いシミはタンパク質や脂質などの汚れが付着して固まったものです。
そのため衣服の脇部分がすぐに黄色くなりやすいという場合は、アポクリン腺からの汗が多く分泌されているという事が考えられ、ワキガ体質の可能性が高いといえます。
夏などわき汗をかきやすい時期であっても、エクリン腺からの汗であれば殆どが水分なので脇部分が黄色く残るという事はありません。
飲酒や喫煙が多い
飲酒や喫煙そのものがワキガ体質を作るという事はありませんが、体臭そのものを強める原因であるため、ワキガの症状が強くでやすくなる原因になる可能性はあります。
また、アルコール摂取による血流の増加や喫煙によるニコチンの摂取は発汗を促す作用があるため、ワキガの症状を悪化させる可能性が考えられます。
ワキガ体質が発現する年齢は?
ワキガ体質の遺伝的要素を持っていても、生まれた時からワキガ体質であるという事はありません。
なぜならワキガの原因であるアポクリン腺の発達や汗の分泌は性ホルモンの刺激によって促進されるため、第二次性徴を迎えて性ホルモンの分泌が盛んになるまではワキガの症状は出てこないのです。
10~15歳頃に発現してくる事が多い
第二次性徴の時期は人それぞれに異なりますが、早くて10歳頃から始まります。
第二次性徴によって性ホルモンの分泌が盛んになるとアポクリン腺が発達して汗の分泌も促進されてくるため、ワキガかどうかが分かるのはこの頃からであるといえるでしょう。
ただし、アポクリン腺に限らず代謝が活発な時期ですので、皮脂など様々な要因で体臭が強くなっているという可能性もあります。
「ワキガかも」と思ったら、一度専門のクリニックで相談して症状の正確な判定を行い、適切なケア方法について相談してみると良いでしょう。
10代後半から20代でピークに
性ホルモンの働きは20代でピークを迎え、徐々に落ち着いていくため、ワキガのニオイも少しずつ軽減していく事が多いといえます。
しかし一方で、この時期に親元を離れて自立した生活を始めるケースも多く、食事内容が偏ってしまったり、慣れない生活に強いストレスを感じたりといった影響で体臭が強くなり、わきがの症状が出てくるという事もあります。
30代、40代以降でホルモンバランスが崩れて症状が出る事も
基本的には加齢によって性ホルモンの働きが低下していく事でアポクリン腺の働きも低下するため、わきがの症状は軽減していくと考えられますが、40代以降になるといわゆる更年期障害のように、ホルモンバランスが崩れてしまう事でアポクリン腺が活発になり、わきがの症状が出てくるというケースもあります。
また、30代以降は代謝の低下などによって体臭が強くなりやすいため、わきがではなく加齢臭など様々な体臭が出てくる時期であるといえます。
妊娠や出産における変化でわきがとなる可能性も
妊娠や出産はホルモンバランスが大きく変化するため、アポクリン腺が刺激されて発達し、ワキガ体質となる可能性もあります。
このケースでは基本的には出産、そして授乳の期間が終わってホルモンバランスが元に戻れば体質も元に戻りますので、過度に心配する必要は無いと言えるでしょう。
ワキガの症状が出てきた場合の医療的に行える対策
実際にワキガ体質の症状が出てきた場合、市販の制汗剤を使用してのケアやこまめに汗をふき取る、衣服を清潔に保つといったようなケアでニオイを抑える事は可能ですが、頻繁にケアをしなくてはならないような状態は強いストレスとなりますし、出来るなら根本から対策をしてしまいたいですよね。
ワキガの症状をしっかり対策するためには、医療的な対応がおすすめです。
体に対する負担が軽いものから、原因となるアポクリン腺を完全に除去する手術まで様々な方法がありますので、状況に応じて検討してみましょう。
注射で一定期間、汗の分泌を止める「ボトックス注射」
ボトックス注射とは、神経の働きを阻害する薬剤を使用して汗腺の働きを一定期間止める事ができる治療法です。
汗腺による汗の分泌がストップするため、多汗症やわきがの症状をおさえる事ができます。
ボツリヌストキシンという毒素由来の薬剤を使用しますが、この薬剤は表情ジワの改善やエラのハリを改善するプチ整形などでも数多く使用されているものであり、非常に安全な治療です。
ボトックス注射の効果は数か月で無くなってしまうため、医師の指示に従って定期的な注射治療を繰り返す必要がありますが、ダウンタイムなどが特になく手軽に受ける事が出来る点が大きなメリットです。
数日間汗が出てくるのを止める医療用制汗剤「パースピレックス」
市販の制汗剤は一時的に汗の分泌を止めるという効果に留まりますが、医療用の制汗剤「パースピレックス」は、塗ると毛穴の中で栓をするような状態になり、数日間汗の分泌を止める効果を発揮します。
そのため、週に2~3回程度塗りなおせば汗を抑える事が出来るので、日々の細かいケアを意識しなくても良くなります。
肌への負担などから体質によっては使用できない可能性もありますので、使用を検討される際は取り扱いのある専門のクリニックで相談しましょう。
アポクリン腺の除去手術
アポクリン腺は手術で直接除去する事が出来ます。
わきがの原因であるアポクリン腺を除去してしまえば、ニオイの元となる汗が分泌されなくなりますので根本から悩みを解消していく事が可能です。
ただし、10代など成長期の途中で手術を行うと手術後に新たなアポクリン腺が作られていく可能性があるため、手術を受ける時期などについては医師とよく相談してきめるようにしましょう。
アポクリン腺を除去する手術には様々な方法がありますが、最も効果が確実で広く行われているものは剪除法(せんじょほう)または「皮弁法」「直視下摘除法」と呼ばれるものです。
これは皮膚を切開してから裏返し、直接汗腺の位置を医師が目視で確認しながら除去を行っていく方法で、アポクリン腺をしっかり除去できるため治療効果が非常に高いという点が大きな利点です。
一方で手術の後には皮膚と皮下組織をしっかり癒着させるために強く固定する必要があり、1週間程度は動きが制限される状態となるなどダウンタイムが大変になりやすい点や、手術に時間がかかってしまうがデメリットとして挙げられ、術後のケアを楽にしたり、手術の効率を高める目的で他の手術方法が考案されています。
その方法としては、例えば小さく切開した部位から汗腺を除去するための器具を挿入し、皮膚の内側から汗腺を除去していく「ローラーシェービング法」や、マイクロ波という水分と反応して熱を生じるマシンによって皮膚表面から汗腺を破壊する「ミラドライ」などがありますが、これらの方法はいずれも治療を短時間で効率よく行える点や術後の身体的負担が剪除法と比べれば軽微である一方で、どうしても汗腺が残ってしまう可能性が高いため、治療効果という点では劣ってしまいます。
どの治療法が良いかは効果だけではなく術後にどの程度安静にしていられるかや、治療のやり直しなども含めてどの程度までのコストを許容できるかなどにもよりますので、まずは一度専門の医師と相談してみてください。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹