コラム
COLUMNサクセンダは安全? 危険性や副作用について詳しく解説
最近になって知っている方が増えてきた痩身治療の1つに、GLP-1受動態作用薬という薬品の内服や注射によるものがあります。
サクセンダはこのGLP-1受動態作用薬の代表的なものの1つで、様々な医療機関がこの薬の処方などを行っているため、聞いたことがある方も多いかもしれません。
サクセンダを用いた治療を実施しているクリニックでは、サクセンダのもつ食欲抑制や脂肪燃焼、さらには体質改善といった効果をダイエット薬として活用していますが、一方でこのタイプの薬をダイエットとして使用する事はある種の危険性やリスクも伴うため、SNSなどでは危険性や副作用を心配する声も散見され、使用に抵抗を感じている人も多くいらっしゃるようです。
そこで今回は、サクセンダの効果や危険性、副作用といった気になるポイントについて、詳しく解説します。
サクセンダとは
サクセンダ(Saxenda)とは、肥満治療を目的にした食欲抑制剤のことで、デンマークのノボノルディスク社が製造する製剤の名称です。
リラグルチドという成分を主体とした製剤で、主に糖尿病などによる肥満症の治療薬として様々な国で使用されています。
サクセンダの主要成分であるリラグルチドは、食べすぎを抑える食欲抑制作用や、少ない食事量で満腹感を得やすくなる胃排泄遅延作用を実現するもので、過剰な食事を抑制する事で肥満症の改善が行えるものとなっています。
サクセンダは、アメリカの厚生労働省にあたるFDA(米国食品医薬品局)や、EMA(欧州医薬品庁)によって承認を受けており、一定以上の肥満症の治療薬として使用されています。
一方で2023年時点、日本の厚生労働省は承認しておらず、保険適用での治療などでは使用ができません。
しかしながら、個人輸入の範疇であれば使用できるため、医療機関によっては医師の責任の下で瘦身治療を目的として輸入および処方されているという状況になっています。
サクセンダは、定期的な使用によって食欲を抑制する事が可能で、食事の際もすぐに満腹感が得られるようになるため、食事制限が強いストレスとなってダイエットがなかなかうまくいかないと悩んでいる人でも、苦労せずに楽な気持ちでダイエットに取り組めるようになるという点が利点となっています。
しかし、サクセンダは食事制限といった精神的な苦痛を伴わないダイエットを補助するのに役立つ一方で、そもそもが「糖尿病」の治療薬であるため健康な人が使用するべきではないといった指摘や、吐き気や下痢といった消化器官系の副作用が生じる可能性についての危惧、また粗悪品や偽物といった個人輸入に起因する危険性なども指摘されています。
サクセンダが肥満の改善に効果を発揮するメカニズム
サクセンダの主成分は「リラグルチド(GLP-1)」と呼ばれるもので、GLP-1というのはグルカゴン様ペプチド-1 (Glucagon-Like Peptide-1)の略で、小腸から分泌される消化管ホルモンの一種です。
私たちは食事をするとそれが腸で吸収されはじめ、それと同時に小腸にある細胞からGLP-1が分泌され、GLP-1は膵臓内に血液によって運ばれます。
膵臓はインスリンというホルモンの分泌を行う役割を持つ臓器です。
インスリンは食事から得たエネルギーを細胞の中に取り込んでエネルギーとして使用できるようにする事などで、血糖値をコントロールする働きを持っている事から、ダイエットの際には非常に重要な役割を担います。
サクセンダを投与すると、主成分であるGLP-1が膵臓に運ばれて、膵臓内のβ細胞にある「GLP-1受容体」にくっついてインスリンの分泌を開始します。
また、GLP-1には血糖値を上昇させる「グルカゴン」の分泌を抑制する作用や、胃や腸といった消化器官の働きを鈍化させ、満腹感を感じやすく、空腹になりにくくする作用もあります。
つまり、サクセンダは
といった複数の作用を発揮する事で、肥満症の改善に効果を発揮する医薬品であるといえます。
サクセンダとビクトーザ
サクセンダは日本の厚生労働省から認可を受けていない薬品ですが、サクセンダと同じく「リラグルチド」を主成分とした薬品に、ビクトーザというものがあります。
ビクトーザはⅡ型糖尿病の治療薬として2010年に厚生労働省に認可を受けており、糖尿病の治療薬として保険適用での処方が可能です。
両者の違いは1回の投与量で、サクセンダは最大投与量が1回につき3mgであるのに対し、ビクトーザは最大投与量が1.8mgと少なめになっています。
投与量の調整についても、サクセンダは0.6mgずつ調整が行えるのに対し、ビクトーザは0.3mlずつと細かい調整が可能で、こうした違いにより、サクセンダは主に「肥満症の改善」を目的としたもので、ビクトーザは「糖尿病の改善」を目的としたものとなっています。
アメリカをはじめ、世界各国で「肥満症」の改善薬として承認をうけているサクセンダですが、その治療対象となる「肥満症」はBMI30以上といったような体型であり、日本ではそもそもそこまでの肥満症に該当する割合が少ない(アメリカではBMI30以上が35%以上に対し、日本では5%以下)という事から、有用性や安全性確認などの観点で未承認の状態になっているものと考えられます。
サクセンダの危険性について
サクセンダの危険性については、主に以下のようなことが指摘されています。
消化器官系の副作用がある
サクセンダの危険性で指摘される内容が、「消化器官系の副作用がある」という点です。
副作用の内容としては吐き気や嘔吐(悪心)、便秘、下痢や、胃の不快感、胃痛といった消化器官に関連する副作用が中心で、これは胃腸の働きを緩やかにする「胃排泄遅延作用」の影響によるものです。
重篤な副作用の可能性は低く、基本的には安全性の高い薬であると言えます。
使用してはいけない人もいる
サクセンダは、膵炎、腹部手術や腸閉塞の既往歴がある人、低血糖を起こす恐れがある人などは使用してはいけません。
これはGLP-1が膵臓に働きかける薬である事や、血糖を下げる働きを持つためで、無理に使用した場合には重大なトラブルへと繋がる可能性があります。
また、サクセンダの成分にアレルギーがある人や、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、そして1型糖尿病などに該当する人も使用できません。
きちんとした医療機関で適切な検査を受け、使用しても問題ないと判断された方が使うのであれば問題となるケースは少ないと考えられますが、中には個人輸入などによって取り寄せ、自己判断で使用するといったケースもあるため、危険性が強く指摘されているものとなります。
偽物や粗悪品が流通している
サクセンダは、インターネット等を通じて個人輸入として誰でも購入可能ですが、実際に海外から送られてきた物が偽物や粗悪品であったり、有効期限が切れていたりすることもあります。
偽物や粗悪品、中古品であった場合、健康被害が生じるリスクが高くなることから、サクセンダは危険と言われている側面が考えられます。
自己注射によるトラブル
サクセンダは、自己注射によって薬剤投与を行うタイプの医薬品で、脂肪が多い部位である、腹部、二の腕、太ももといった箇所に、定期的に自分で注射を行います。
注射といっても一般的な注射器ではなく、薬剤入りの簡易キットになっており、点滴や静脈注射とはまったく異なる仕組みの皮下注射のため、誰でも簡単に打つことが可能です。(痛みはほとんど生じません) 自己注射型のデバイスはサクセンダ以外にも多種あり、それこそ糖尿病治療として利用されるビクトーザも同様ですので、これ自体が大きなリスクというものではありません。
ただ、扱い方を誤ると内出血や腫れ、針が折れたりするといったトラブルに繋がる可能性があるため、リスクの1つと考えることができます。
健康体の人がGLP-1を使用する事への懸念について
GLP-1は、日本では厚生労働省から認可を受けているビクトーザの影響などもあり、「GLP-1=糖尿病の薬」という認識が強くもたれています。
そのため、糖尿病でもない健康体の人がGLP-1を使用する事は目的外使用であり、危険であるといった注意喚起がよく行われますが、そもそもサクセンダはアメリカや世界各国で「肥満症」の治療薬として認可を受けている薬であって、糖尿病の治療薬ではありません。
肥満症の治療を目的として安全性の確認が行われ、実際に治療薬として使用されている薬ですので、ダイエット目的で使用する事は目的外使用には該当しないという事が出来ます。
ただし、だからといって「誰にでも使えるダイエット薬」ではなく、認可を受けている内容はBMI30以上の肥満(身長170㎝であれば87kg、身長155cmであれば73kg程度)の方を対象とした薬ですので、そもそもそこまで太っていない方が使用するというケースについては注意が必要といえます。
いずれにしても体の機能を調整する医薬品である以上、何かしらの副作用やリスクが生じる可能性はありますので、サクセンダを使用する場合はきちんと検査をして、安全に使用ができるような指導を行っているクリニックでの処方を受けるようにした方が良いでしょう。
サクセンダに期待できる効果・メリット
サクセンダに期待できる効果やメリットは、主に満腹感の持続や血糖値のコントロールにありますが、それ以外にも複数の効果があります。
主な内容について解説します。
満腹感を得やすくなる
前述の通り、サクセンダを使用した際の効果の1つが「満腹感を得やすくなる」というものです。
これは、サクセンダが視床下部の食欲抑制ニューロンに作用する事で、食事を摂取した際に満腹感を感じやすくさせるためです。
いつもの半分から3分の2程度の分量で満腹感が得られるようになるため、食事量が自然と減少して無理なくダイエットをする事ができます。
従来のダイエット向け医薬品は脳の視床下部へ直接働きかけ、ドーパミンの分泌などをコントロールするようなものが多く、依存性などのリスクが指摘されていましたが、GLP-1での食欲抑制はこれよりも作用が穏やかであり、安全に使用しやすいと考えられます。
空腹感を和らげる
サクセンダの主成分であるリラグルチド(GLP-1)によって、消化器官の働きを鈍化させることで、食事の吸収スピードが緩やかになるため、食事から時間がたってもなかなか空腹にならず、空腹感を感じにくい状態を維持する効果があります。
これによってそもそも沢山の食事をしたいという気持ちを抑える事で、食べたい欲求を我慢するというストレスを軽減する事ができます。
内臓脂肪の蓄積を防ぐ
サクセンダの効果の1つに「内臓脂肪の蓄積を防ぐ」というのもあげられます。
リラグルチド(GLP-1)によって、血液中の糖分が脂質に変換されにくくなるため、結果として脂肪が蓄積しづらくなり、内臓脂肪の蓄積を防止します。
糖尿病を予防する
糖尿病の多くはⅡ型糖尿病という種類で、膵臓からのインスリン分泌量の減少や働きが弱くなる事で、糖分をエネルギーに変換する機能が弱くなる症状です。
なぜ糖尿病になるのかという原因については食べ過ぎや肥満などによって過剰にインスリンの放出を続けていると、徐々に膵臓の機能が衰えていく事が原因として考えられています。
サクセンダの持つ血糖値のコントロールや食欲抑制効果は糖尿病の原因となる状態を抑制する事に繋がり、海外での臨床試験でも糖尿病の予防効果があった事が証明されています。
心筋梗塞などのリスク軽減
心筋梗塞など、心血管のトラブルリスクについても、サクセンダの服用で軽減できる事が報告されています。
これも過剰な食欲の抑制や肥満予防による効果の1つと考えられ、心血管死のリスクを22%軽減するといった報告もあります。
従来のやせ薬である中枢性食欲抑制剤では脳卒中などを増加させるリスクがありましたが、GLP-1ではこういったリスクをむしろ軽減できるというのは大きなメリットといえます。
サクセンダの副作用
サクセンダの副作用としてあげられる内容は下記の通りです。
- 吐き気、嘔吐(悪心)
- 便秘
- 下痢
- 頭痛
- 腹痛、胃痛
- 腹部の膨張
- 倦怠感
ほとんどは軽度な症状ですが、体質などによっては強い副作用として生じる場合もありますので、必ず医師の指導下で使用を行うようにしましょう。
サクセンダでのダイエットはリバウンドが起こるのか
ダイエット後にリバウンドが生じて体重がすぐに元に戻ったり、元の体重より増えてしまう理由は「ストレスからの過剰な食事」や「筋肉量低下による消費エネルギーの減少」にあります。
特に、極端な食事制限などによるダイエットの場合は長期間の過剰なストレスからドカ食いをしてしまいやすく、またダイエット期間のエネルギー不足によって筋肉が分解される「カタボリック」が起こるため、リバウンドしてしまう可能性が高いといえます。
サクセンダを使用したダイエットでは、食事量のコントロールを強い精神力で行う必要が少なくなり、強いストレスがかかりにくくなるため、比較的リバウンドはしにくいといえます。
ただし、食事量を減らして栄養不足な状態が続くと筋肉の分解は進んでしまいますので、食事内容ではタンパク質を多めにしたり、軽くでも運動習慣をつけるようにして代謝を下げないようにする必要はあります。
また、ストレスが少ないとはいってもダイエットをやめたとたんにドカ食いするようになってしまえば、当然リバウンドは発生しますので、食事量については過剰にならないよう意識を継続しましょう。
サクセンダを使用できないケース
サクセンダは、下記の内容に該当する場合には使用する事ができません。
- 18歳未満または75歳以上
- 妊娠中および授乳期間中
- 糖尿病治療薬やインスリンを服用中
- 膵炎
- 腎機能障害
- 肝機能障害
- 胃腸障害
- 腹部手術や腸閉塞の既往歴がある
- 低血糖を起こす恐れがある
- サクセンダの成分にアレルギーがある
- 糖尿病性ケトアシドーシス
- 糖尿病性昏睡
- 1型糖尿病患者
- 本人または家族に甲状腺髄様がん、または多発性内分泌腫瘍症がある
- 多発性内分泌腫瘍症の疑いがある
また、上記に当てはまらない場合であっても、体質によって危険を伴うため使用を検討する際は必ず専門の医師による診察を受け、適切な処方で使用しましょう。
サクセンダの保険適用について
サクセンダは厚生労働省の認可を受けておらず、保険適用がありません。
同じくリラグルチドを主成分としたビクトーザは認可を受けていますが、こちらはⅡ型糖尿病の治療薬として承認されている治療薬ですので、糖尿病としての診断がなければ保険適用で使用する事はできず、肥満症の改善としては利用できません。
そのためサクセンダは必ず自費診療での購入となり、取り扱うクリニックによってその料金はバラバラです。
同じ薬であれば安い方が良いと考える方が多いと思いますが、クリニックによって処方料金に精密な検査代やケア代などが含まれているなど、それぞれ違いがありますので、料金の安さだけではなく安心して治療を継続できるところをおすすめします。
サクセンダ以外でおすすめの美容医療による痩身法
サクセンダの危険性が心配という人は、美容医療によるその他の痩身治療を検討してみましょう。
美容医療による瘦身法には、以下のようなものがあります。
脂肪吸引
お腹や二の腕など「気になる部分の脂肪を集中的に落としたい」という方におすすめの治療が脂肪吸引です。
脂肪が気になる部位にカニューレと呼ばれる吸引器具を挿入し、脂肪細胞を直接取り除きます。
脂肪細胞が減ることから、体のラインが目に見えて変わることや、他の方法よりも確実性が高いこと、そしてリバウンドしないといったことがメリットです。
サクセンダによる痩身は全身の脂肪を少しずつ減らしていく形となりますが、脂肪吸引は部分痩せが可能となるため、理想的なボディラインを追及したいという方には特に向いているといえます。
脂肪溶解注射(メソセラピー・BNLS)
脂肪溶解注射は、脂肪を溶かす薬剤を脂肪が気になる部位に注射する方法で、クリニックで注射を打つだけという手軽さで部分痩せが可能です。
1回の治療では、脂肪吸引ほどの瘦身効果は得られませんが、徐々に脂肪を減らせることや、こちらも脂肪細胞を減少させるためリバウンドしにくいというメリットがあります。
広い範囲の脂肪を大幅に減少させるような治療は難しいですが、フェイスラインなど「もうちょっと脂肪を減らして綺麗になりたい」といった要望には最適な治療です。
処方薬や医療用サプリメント
サクセンダの他にも、痩身を実現する薬や医療用サプリメントは様々です。
特に人気のものとしては食事によって摂取した脂肪の吸収を阻害する「ゼニカル」や、ストレスによる過剰な食欲を抑えるサプリメントなどがあります。
サクセンダよりも副作用が少なく、しっかりとダイエットをサポートする効果のものも多種ありますので、処方薬やサプリメントによる痩身をご希望の方は一度お気軽にご相談ください。
本コラムの監修医師
1978/04:富山医科薬科大学医学部医学科入学
1984/03:富山医科薬科大学医学部医学科卒業
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック
医学博士 / 日本美容外科学会専門医
第105回日本美容外科学会 会長
城本クリニック総院長 森上和樹